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日外会誌. 92(4): 367-373, 1991


原著

DST (donor-specific blood transfusion) によって誘導される抑制性T細胞
―ヒトT細胞ハイブリドーマの樹立と免疫学的解析―

岡山大学 医学部第1外科(主任:折田薫三教授)

羽井佐 実

(1990年2月14日受付)

I.内容要旨
腎移植予定患者におけるDSTの移植腎生着延着効果のメカニズムとして,DST後に誘導される抑制性T細胞について解析した.
DST後にmixed Iymphocyte reaction(以下MLR)suppressor cell assayにより抑制性T細胞が誘導されていると考えられたレシピエントのDST後の末梢血リンパ球とヒトT白血病細胞株CCRF-CEMAGとを用いpolyethylene glycol法にて細胞融合を行った.限界希釈法によるクローニングを行い,responder cellをレシピエントリンパ球,stimulator cellをドナーリンパ球とした特異的なMLRを抑制するハイブリドーマを樹立し,そのMLR抑制様式及びフローサイトメトリーを用いた細胞表面抗原の解析を行った.
細胞融合のうち特異的MLRを35%以上抑制する2つのハイブリドーマHK12,HK40を樹立した.これらのハイブリドーマは2,000radγ線照射し混合培養に添加することにより特異的MLRをそれぞれ40.5%,38.9%抑制したが,非特異的MLRは抑制しなかった.これらのハイブリドーマの非刺激の培養上清の添加ではMLRの抑制は認められなかったが,HK40をドナーリンパ球で24時間混合培養刺激すると,その培養上清中に,特異的なMLRを抑制する抑制物質が誘導された.このアロ抗原刺激後のHK40の培養上清によるMLRの抑制は濃度依存性であり,MLRの培養初期(開始時及び1日目)に添加した時にのみ抑制活性を認めた.また,HK40はCD4,CD45Rの細胞表面抗原を発現しており,suppressor inducer機能を有するT細胞ハイブリドーマと考えられた.以上より,DST後に抑制性T細胞がin vivoにおいて誘導されており移植腎生着延長効果をもたらしているという可能性が示唆された.

キーワード
donor-specific blood transfusion (DST), 抑制性 T 細胞, ヒト T 細胞ハイプリドーマ, mixed lymphocyte reaction (MLR)


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