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日外会誌. 92(3): 346-350, 1991


原著

冠動脈病変を伴った大動脈疾患の外科治療

名古屋大学 医学部胸部外科

玉木 修治 , 阿部 稔雄

(1990年3月20日受付)

I.内容要旨
冠動脈疾患をともなった大動脈疾患,43例を施行手術および手術順位により5群に分け検討し,両疾患の合併例に対する手術方針を考察した.
冠血行再建術(CABG)と大動脈手術同時施行例(I群)は9例であった.同一視野で手術可能であったのは5例で3例は緊急手術例であった.この群に2例の死亡を見たがいずれも心臓由来の死亡ではなかった.CABG施行後,大動脈手術施行例(II群)は14例であった.CABGから大動脈手術までの平均待機期間は2.9ヵ月であり,この群に死亡例をみていない.大動脈手術のみ施行例(III群)は12例であった.この群に3例の死亡例を経験したが,このうち2例は心筋梗塞による死亡例であった.又死亡2例を含む3例に手術周辺心筋梗塞(PMI)を見た.大動脈手術後CABG施行例(IV群)は3例であった.このうち2例は大動脈手術後の観察期間中に冠動脈疾患に気付かれた例であった.いずれの疾患に対しても手術を施行しなかった例(V群)は5例であった.手術を施行しなかった理由は様々であったが,この群に3例の死亡を見た.
これらの結果から両疾患の合併例に対しては以下のごとき治療方針を考慮している.即ち待機手術においてはCABGを優先させ全身状態の安定後大動脈手術を施行する.緊急手術において術野が異なる場合は緊急性の大なる手術を優先させる.同時手術は同一術野で手術可能な場合,異なる術野の場合は両疾患とも緊急を要する場合か大動脈手術の危険性が少ないと判断された場合とする.

キーワード
冠動脈疾患, 大動脈疾患, 合併症例

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