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日外会誌. 92(3): 266-275, 1991


原著

食道癌切除再建術前後の肺血管外水分量の変動
ーとくに熱とナトリウムを用いた二重指示薬希釈法による肺血管外水分量についてー

札幌医科大学 第2外科

渡辺 敦 , 草島 勝之 , 杉本 智 , 田中 明彦 , 竹田 晴男 , 三品 寿雄 , 小松 作蔵

(1990年2月23日受付)

I.内容要旨
食道癌切除再建術後呼吸管理の1指標として熱とNa二重指示薬希釈法により,肺血管外水分量(以下EVLW:Extra Vascular Lung Water)を他の循環呼吸諸量とともに測定し,1.食道癌術後の肺合併症発症群と非発症群の間で術前術中の諸因子,2.EVLWと他の循環呼吸諸量の経時的動態,3.⊿EVLWI(EVLWを体重1kgに換算したEVLWIの変化量)と輸液諸量の経時的動態と相関関係,4.肺合併症発症群のうち肺水腫例におけるEVLWの動態,5.EVLWと他の諸量との相関関係,について検討を行なった.対象は,1988年1月から教室において食道癌切除再建術を施行した31例のうちEVLWを測定し得た27例であり,術後3日間以上器械呼吸を要した肺合併症発症群(I群)と,非発症群(II群)に分類した.術前,術中因子で両群間に有意差が見られたのは,術前の1秒率(I群69.2±6.5% II群76.8±1.9%)のみであった.EVLWIでは,術前I群5.56±0.67ml/kg,II群5.76±0.41ml/kgであり,術後も両群間で有意差はなかった.術前値との比較では,II群で術直後のみ有意に低かった.⊿EVLWIと輸液諸量に関しては,術直後から術後12時間目の間の⊿EVLWIと水分バランスが正の1次相関を呈した.肺水腫と診断された症例は2例で,EVLWは術直後より他の諸量が変化する以前に急増し,他の症例と明らかに相違した動態を示した.これら2例は透過亢進型肺水腫と考えられた.全経過を通してEVLWと相関する指標は存在せず,EVLWを他の指標で代用することはできなかった.各時相ごとの検討では,術直後と36時間目にEVLWIと肺血管抵抗係数(PARI)・全肺抵抗係数(TPRI)・体血管抵抗係数(SVRI)が弱いながらも負の1次相関を呈した.EVLWは,食道癌術後肺合併症の鑑別診断および肺水腫症例の早期診断に有用な指標と考えられた.

キーワード
食道癌切除再建術, 肺合併症, 肺血管外水分量, 熱と Na, 二重指示薬希釈法

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