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日外会誌. 92(2): 195-205, 1991


原著

外科的刺激伝導障害防止に関する組織学的研究
-とくに房室束中枢部と周辺構造物との関係について―

高知医科大学 第2外科(主任:田宮達男教授)
高知医科大学 第1病理(指導:原 弘教授)

清久 泰司

(1990年2月5日受付)

I.内容要旨
開心術時の縫合糸刺入出による伝導系障害防止に資するため先天性心室中隔欠損心における刺激伝導系の走行,とくに房室東中枢部と欠損孔および三尖弁中隔尖付着部との位置関係を病理組織学的に検討した.検索材料は正常心5例,孤立性心室中隔欠損症膜性部周辺型13例,ファロー四徴症8例,計26例の心連続切片標本である.うち正常心3例,ファロー四徴症1例が成人例,残り21例が小児例(新生児から4歳児まで,平均月齢9.0ヵ月)と死産児1例である.これらの症例について
1.欠損孔下縁と非分枝東軸との距離
2.穿通東及び非分枝東軸の右室への偏位度
3.伝導系と三尖弁中隔尖付着部との距離
4.三尖弁中隔尖付着部(弁輪)の高さを0とした時の伝導系の高さ
5.部位別にみた房室束の長さと非分枝束の直径を組織計測した.結果は以下の如くである.
1.孤立性心室中隔欠損症膜性部周辺型流入部欠損では非分枝束の欠損孔下縁との距離は0.40±0.14mmであった.また,三尖弁中隔尖付着部~房室東間距離も0.40±0.27mmでありかつ両者がほぼ同高に位置した.一方,孤立性心室中隔欠損症膜性部周辺型肉柱部欠損及び流出部欠損では,非分枝東軸と欠損孔の距離がそれぞれ1.57±0.80mm,1.75±0.35mmであった.また,三尖弁中隔尖付着部~房室東間距離はそれぞれ1.70±1.23mm,1.10±1.13mmであった.
2.ファロー四徴症膜性部周辺型では筋性型に比べると非分枝束走行が表在性であった.
以上,孤立性心室中隔欠損症膜性部周辺型流入部欠損やファロー四徴症膜性部周辺型では心室中隔欠損閉鎖術に際し,伝導系傷害の危険性が各疾患の他病型に比し高いことを解剖学的関係より明らかにした.また,疾患別,病型別に房室東中枢側の如何なる部分が傷害を受けやすいかをも指摘した.

キーワード
刺激伝導系房室束, 孤立性心室中隔欠損症, ファロー四徴症, 病理組織学, 組織計測

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