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日外会誌. 92(2): 187-194, 1991


原著

転移性肝癌に対するTargeting Cancer Chemotherapy
ーDegradable Starch Microsphere による肝内血行動態の変動とその臨床応用ー

千葉大学 医学部第1外科学教室(主任:奥井勝二教授)

小池 正造

(1990年1月23日受付)

I.内容要旨
Degradable starch microsphere(DSM)の肝動脈内投与時の肝内血行動態の変動を転移性肝癌症例において検討し,さらにその臨床効果について検討した.超音波transit-time血流計を用いた肝動脈血流量の測定ではDSM投与前283±27ml/分からDSM 10mg/kg投与後40±36ml/分へと86%低下し,その塞栓時間は平均24±11分であった.DSM 900mgとmitomycin C(MMC)16mgとの併用動注では,MMC 16mg単独動注に比較して末梢血中MMC濃度が投与後10~60分に渡り0.0248<p<0.0421をもって有意に低く,DSMによる’制癌剤の肝内貯留効果が明らかとなった.一方, DSMによる肝内血流分布の変化を検討するため,99mTc-Macroaggregated albumin(99mTc-MAA)の肝動脈内注入を行い,腫瘍部が低集積像として確認された7例について,腫瘍部と非腫瘍部との放射活性比(T/N比)を求め,これをDSM 10mg/kgと99mTc-MAAとの併用動注時のT/N比と比較した.T/N比は37.6±11.8%から62.1±6.4%とp=0.000756において有意に増加を示し,DSMによる低血流部への相対的血流増加が確認された.
一方,DSMの臨床応用として転移性肝癌22例に対してDSMとMMCの併用動注を行った.全体の奏効率は73%に認められた.併用動注による副作用としては,悪心ロ区吐などの自覚症状が主で,肝機能障害は極く軽度であった.
以上のことから,DSMと制癌剤との併用動注では,血流による制癌剤の流出が抑えられ,制癌剤の組織到達性の向上と全身的副作用の軽減が図られることにより,抗腫瘍効果の増強に預ることが示唆された.

キーワード
転移性肝癌, 肝動脈血流量, targeting cancer chemotherapy, RI-angiography, 澱粉小球体


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