[書誌情報] [全文PDF] (1842KB) [会員限定・要二段階認証][検索結果へ戻る]

日外会誌. 92(2): 160-166, 1991


原著

閉塞性黄疸肝における肝蛋白合成能と肝機能総量の変動に関する基礎的検討

千葉大学 医学部第1外科

神野 弥生 , 宮崎 勝 , 宇田川 郁夫 , 越川 尚夫 , 伊藤 博 , 寺本 修 , 奥井 勝二

(1989年12月4日受付)

I.内容要旨
閉塞性黄疸時および閉塞性黄疸解除後の肝細胞機能の変動を検討すべく,ラットを用いAminopyrine Breath Test(ABT)およびGalactose Tolerance Test(GaTT)により肝細胞機能総量を測定,さらに肝蛋白合成能を組織培養における14C-leucineの肝蛋白への取り込みにより測定し, ABTおよびGaTTでみた肝細胞機能総量との関連性につき検討を加えた.
(1)ABT値は5日間黄疸群で前値の52%と有意に低下し(p<0.001),14日間黄疸群では5日目以後はほぼ変動なく14日目で前値に比し48%の低下(p<0.001)をみたが5日間群と14日間群の間に差異をみなかった.閉塞解除後に前値へ回復するのに5日間群で10日間,14日間群で20日間を要した.
(2)ガラクトース血中半減時間は前値に比し5日間黄疸群で1.82倍に,また14日間黄疸群でも14日目で1.46倍と有意に延長を示した(p<0.01)が両群間に差異はみなかった.閉塞解除後は5日間黄疸群,14日間黄疸群は,ともにほぼ10日間を要し前値への回復を示した.
(3)肝蛋白合成能は,5日間黄疸群で前値の1.77倍と有意に亢進を示し(p<0.001),14日間黄疸群では2.32倍とさらに強い亢進を示した(p<0.001)が5日間群との間に有意差はみられなかった.閉塞解除後の前値への回復はそれぞれ20日間を要した.
閉塞性黄疸時には肝細胞の蛋白合成の亢進が惹起されその負荷は閉塞解除後の減黄後にも遷延することが示された.またこの亢進は5日でも14日間でもその程度に差異はなかった.一方ABT, GaTTでみた肝細胞機能総量は閉塞性黄疸時に著明に低下したが5日および14日間群の間でその低下に差異はみず閉塞解除後の回復は減黄後も遷延した.即ち肝蛋白合成能とABT, GaTTでみる肝細胞機能総量はreciprocalに変動し,閉塞性黄疸時の肝蛋白合成能の充進の遷延が結果的に肝細胞機能総量で反映される予備力を低下すると考えられた.

キーワード
閉塞性黄疸, Aminopyrine Breath Test, Galactose Tolerance Test, 肝蛋白合成能, 肝細胞機能負荷

このページのトップへ戻る


PDFを閲覧するためには Adobe Reader が必要です。