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日外会誌. 92(2): 133-143, 1991


原著

経直腸的超音波断層法による直腸癌術前照射の効果判定

千葉大学 医学部外科学第1講座(主任:奥井勝二教授)

谷山 新次

(1990年1月31日受付)

I.内容要旨
直腸癌に対する術前照射療法の効果判定の指標として,経直腸的超音波断層法を用い腫瘍の体積計算を行い切除標本の病理組織学的所見と対比し,その有効性を検討した.超音波による体積計算の正確性を検討するため非照射直腸癌15例をコントロール群とした.超音波装置のProbeは体腔内Radial Scannerを使用, Balloon法により腫瘍の口側端より肛門側端まで5mm間隔で断層像を描出し超音波計測装置により体積計算を行った.切除標本の体積計算は腫瘍の口側端より肛門側端まで5mm間隔の割面を作成し超音波と同様な方法で体積計算を行った.術前照射17例は,照射前・照射後の超音波体積計算と切除標本の体積計算をコントロール群と同様な方法で計測した.コントロール群は,超音波の体積が切除標本の体積より過大に測定されたもの12例,一致2例,過小1例であり誤差は平均14.6%であった.照射群は,全例が照射前より照射後で超音波体積は小さく測定され平均縮小率は35.7%であった.照射前と切除標本の体積の比較では,16例が切除標本で少さく測定され平均縮小率は63.3%であった.照射後と切除標本との比較では,15例が照射後で大きく測定され誤差の平均は39.9%であった.また,照射前・後の超音波体積の縮小率と切除標本の組織学的効果判定との比較では,組織学的効果を認めたものほど縮小率が高い傾向を示し,1bから3までを組織学的効果有りと判定すると,Kruskal-Wallis検定では縮小率35%で有意差を認め,35%以上を組織学的効果有りと判定した.以上から,超音波による直腸癌の体積計算値は,切除標本の体積と平行関係を示していた.照射後の超音波体積の誤差は大きく,照射による腫瘍および腫瘍周囲の繊維化が大きな原因と考えられた.さらに照射前後の超音波体積の比較では,高い縮小率の認められた症例は著しい組織学的効果を示していた.この結果,照射前後の腫瘍体積の超音波計測は,術前照射の効果を判定する上に極めて有用な方法で有ることが確認された.

キーワード
直腸癌術前照射, 経直腸的超音波断層法, 照射効果判定

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