[書誌情報] [全文PDF] (2194KB) [会員限定・要二段階認証]

日外会誌. 92(2): 127-132, 1991


原著

Flow cytometryによる核 DNA 量からみた大腸癌の悪性度に関する検討
―DNA plodidy patternと肝転移の関連性について―

近畿大学 医学部第1外科

船井 貞往 , 黒岡 一仁 , 松田 泰次 , 牛田 伸二 , 相良 憲幸 , 進藤 勝久 , 安富 正幸

(1989年8月4日受付)

I.内容要旨
82例の壁深達度がss(a1), s(a2)の大腸癌のパラフィン包埋標本を用いてflow cytometry(FCM)による核DNA量解析を行ない,大腸癌の悪性度を検討した.
DNA ploidy patternは,DNA diploidy 27例(33%),DNA aneuploidy 55例(67%)であった.病理組織学的悪性度の指標である組織型,脈管侵襲,リンパ節転移および肝転移とDNA ploidy patternを比較検討した結果,組織型とDNA ploidy patternの関連はみられなかったが,DNA aneuploidyは,リンパ管侵襲陽性例では77%と高率で(p<0.001),静脈侵襲・リンパ節転移陽性例でもそれぞれ82%,76%と出現頻度が高かった(p<0.05).一方,DNA ploidy pattern別の初回手術時肝転移率は,DNA diploidy:0%に対しDNA aneuploidy:16.4%と有意に高率であった(p<0.05).また肝転移再発率を無再発生存曲線から検討すると,5年無再発生存率はDNA diploidyが95.2%であるのに対し,DNA aneuploidyでは72.8%と有意に低く(p<0.05),肝転移再発率も高いことを示し,DNA ploidy patternと肝転移の関連性が示唆された.さらにDNA ploidy patternと予後の検討では,絶対治癒切除例の5年生存率はDNA diploidyでは92.9%であったが, DNA aneuploidyでは62.5%と有意に低値を示した(p<0.05).
以上よりFCMによるDNA解析は,大腸癌の生物学的悪性度の判定と肝転移予測に有用であることが解明された.

キーワード
大腸癌の肝転移, DNA ploidy pattern, Flow cytometry


<< 前の論文へ次の論文へ >>

PDFを閲覧するためには Adobe Reader が必要です。