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日外会誌. 92(1): 97-99, 1991


症例報告

乳癌を合併した乳腺乳頭腺腫 (Adenoma of the Nipple) の1例

1) 帝京大学 医学部第1外科
2) 帝京大学 医学部病院病理

浅越 辰男1) , 花谷 勇治1) , 堀江 文俊1) , 根本 明久1) , 城戸岡 謙一1) , 四方 淳一1) , 今村 哲夫2)

(1989年12月18日受付)

I.内容要旨
乳腺乳頭腺腫(Adenoma of the Nipple)は本邦報告13例というまれな疾患であり,乳頭に限局し表面にびらん・潰瘍を伴う腫瘤を主訴とすることが多いためPaget癌と誤診されることもあり,また組織学的に腺管の増殖像が癌の浸潤像と見誤られやすい病変である.最近,乳癌を合併した乳腺乳頭腺腫の1例を経験した.症例は42歳既婚女性,14年前より左乳頭の小腫瘤に気付いていたが,最近になり同腫瘤が増大し,また同側乳房腫瘤を認めたため来院した.乳房腫瘤は生検の結果乳頭腺管癌と判明したため,非定型的乳房切断術を施行した.乳頭の腫瘤は直径12×12mm,硬く境界明瞭,皮膚面に一部虫食い状びらんを有し,組織学的には二層性が保たれ腺管の増殖像が基本構造であり,乳癌部位との病理学的連続性が全く認められなかったため,乳癌を合併した乳頭腺腫の本邦初例と考えられた.

キーワード
乳腺乳頭腺腫, Adenoma of the Nipple, 乳癌

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