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日外会誌. 92(1): 46-51, 1991


原著

核 DNA 量および癌細胞分裂指数からみた胆囊癌の悪性度
ーとくにss胆囊癌の予後についてー

秋田大学 医学部第1外科

佐藤 泰彦 , 田中 淳一 , 吉岡 浩 , 小山 研二

(1989年12月18日受付)

I.内容要旨
胆嚢癌の悪性度と予後との関係を明らかにすることを目的とし,胆嚢癌31切除例のMitotic Indexと核DNA量を測定し,特にss胆嚢癌を中心に病理学的諸因子および予後との関係を検討した.Flow Cytometryを用いた核DNA量の測定からDiploidは11例(36%),Aneuploidは20例(64%)であった.組織型別にみるとporはすべてAneuploidであったが,これ以外は一定の傾向になかった.深達度別にみるとm,pmはすべてDiploidであったが,これ以外は一定の傾向になかった.Mitotic Indexは2.5~42.2%の間に分布し,組織型別にみると分化の低いものが,深達度別にみると深達度の深いものがやや高い傾向を示した.しかし,同じ組織型,深達度でもAneuploidのMitotic IndexはDiploidのそれよりも高い傾向を示し,核DNA量とMitotic Indexは強く相関した.ss胆嚢癌の検討ではMitotic Indexと肝浸潤,脈管侵襲,リンパ節転移の程度は必ずしも相関しなかったが,核DNA量がDiploidのもの,あるいはMitotic Indexが10%以下のものは肝浸潤,脈管侵襲,リンパ節転移が軽度にとどまっていた.さらに,ss胆嚢癌の5生率はDiploid例で100%,Aneuploid例で34%とDiploid例の予後は有意に良好であった.Aneuploid例のうちDNA heterogeneityを示すものの予後はDiploidy例と同様に良好であった.また,Mitotic Indexの低いものは高いものより長期生存する傾向があった.以上から,核DNA量およびMitotic Indexは胆嚢癌の悪性度の指標となり,特にss胆嚢癌ではその予後を規定する重要な因子になっていると思われた.

キーワード
胆囊癌, ss 胆囊癌, 核 DNA 量, DNA heterogeneity, 癌細胞分裂指数

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