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日外会誌. 92(1): 31-36, 1991


原著

OK-432とfibrinogenの混合投与による大腸癌局所免疫療法の検討

大阪大学 医学部第2外科

門田 卓士 , 森元 秀起 , 室谷 昌弘 , 柳生 俊夫 , 長岡 浩人 , 島野 高志 , 森 武貞

(1990年1月8日受付)

I.内容要旨
私たちは,OK-432をfibrinogenと混合投与することによってOK-432の局所残留時間が延長するとともに,きわめて効率のよい局所免疫反応が誘導できることをみいだし,ヒト大腸癌20例を対象に内視鏡下局注による局所免疫療法を試みた.
OK-432 5KEをaprotinin 1ml (1,000KIE) で溶解した液にfibrinogen 80mgを混和し,術前内視鏡検査時に腫瘍内投与した.投与は原則として1回のみ行ない,肉眼型の経時変化を内視鏡観察するとともに,切除材料を病理組織学的に検討した.
内視鏡観察では,局注後4日で腫瘍部の出血と周堤の崩壊像が認められ,7日目には隆起の平坦化と潰瘍の縮小,さらに14日以後の観察では潰瘍の癩痕化が見られた.
切除標本の病理組織学的検討では,局注後1日目の切除標本で注入部を中心に繊細なfibrin meshworkが形成され,好中球,単核球,形質細胞,好酸球の著明な浸潤と,癌細胞の萎縮,変性,脱落像が認められた.4日目には周堤部の癌巣が肉芽組織で置換されるとともに正常粘膜が被覆する像がみられ,14日以降では変性した癌細胞が瘢痕化した潰瘍底に散見されるのみとなり,リンパ球の浸潤が顕著となった.
OK-432とfibrinogenの混剤は,少量1回投与できわめて強い局所免疫反応を誘導し臨床上有用であるばかりでなく,癌を異物として認識し排除する生体の免疫反応を解析するうえで,示唆に富む知見をあたえると考えられた.

キーワード
OK-432, fibrinogen, 大腸癌, 局所免疫療法

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