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日外会誌. 91(10): 1617-1622, 1990


原著

Flail chest に対する保存的治療を主体とする選択的治療の治療成績と問題点について

帝京大学 医学部救命救急センター

葛西 猛 , 多治見 公高 , 小林 国男

(1989年10月13日受付)

I.内容要旨
Flail chestの治療はその病態生理の解明と相俟って,外固定術から器械的人工呼吸器を用いる内固定術そして除痛とphysiotherapyを中心とする保存的治療へと変遷してきた.当施設においてぱ,1981年より独自に設定した適応条件により保存的治療か器械的人工呼吸器治療かを選択する,いわゆる,選択的治療を行なってきた.今回は,1981年から1988年までに当施設で経験したFlail chest 36例を保存的治療群(保存群)16例と器械的人工呼吸器治療群(器械群)20例に分類して,両者の治療成績と問題点について検討した.器械群のICU滞在日数22.5±15.9日,肺炎の合併率75%,および死亡率15%であったのに対して保存群のICU滞在日数3.6±2.8日,肺炎の合併率6.2%,および死亡率は0%であった.背景因子が異なるため,両群を比較することは出来ないが,保存群の治療成績は極めて優れていた.器械群のレスピレータ装着期間は14.0±6.6日と比較的満的できる結果であった.外固定術の併用によりレスピレータの装着期間を短縮することが出来なかったことから,呼吸管理,つまりIPPVやCPPVからIMVあるいはIMV+CPAPへの変換が装着期間の短縮に実効をもたらしたものと考えている.退院前に呼吸機能検査が行なわれた症例の全てに軽度の拘束性換気障害が認められたが,予想に反して器械群より保存群の障害が軽微であった.さらに,外固定術を併用することによっても拘束性換気障害の改善は認められなかった.今回の検討結果より,Flail chestの約40%は保存的治療が可能であり,その治療成績は極めて優れていた.したがって,Flail chestに対しては保存的治療を主体とする選択的治療が妥当であると考える.

キーワード
保存的治療, 器械的人工呼吸器治療, 外固定術, 治療成績と問題点

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