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日外会誌. 91(10): 1596-1602, 1990


原著

肝流入血行遮断によるショックと血小板活性化因子 (PAF) に関する実験的研究

奈良県立医科大学 第1外科

福岡 敏幸

(1989年10月17日受付)

I.内容要旨
肝流入血行遮断によりもたらされるショックについて,ラットを用い実験的検討を行った.A群:血小板活性化因子(PAF)拮抗薬(CV6209)3mg/kgおよびヘパリン100U/kg静注,B群:CV6209 3mg/kgのみ静注,C群:ヘパリン100U/kgのみ静注,D群:生理食塩水4ml/kg静注,E群:門脈・バイパス下に生理食塩水4ml/kg静注の5群で45分間の肝流入血行遮断を行った.
遮断解除24時間後の生存率はA群:80%,B群:60%,C群:45%,D群:30%,E群:80%であり,CV6209投与および門脈バイパスの設置により生存率の改善が得られた.血行遮断によりA-D群のラットでは血圧の低下がみられたが,門脈バイパスを設置したE群では遮断中の血圧低下が防止された.またCV6209を投与したA,B群では遮断解除後血圧が上昇し遮断前値に復したのに対し,投与しなかったC,D群では血圧は低下したままであった.さらにA群とC群で30分間の肝流入血行遮断を行い,末梢血,血液凝固機能,肝逸脱酵素を測定した.末梢血,血液凝固機能では遮断後A,C群間に大きな変化はみられなかったが,肝逸脱酵素ではミトコンドリアGOTがA群で低値を示し,CV6209により肝虚血障害が軽減された.以上の実験結果から,肝流入血行遮断後にショックと早期死亡を引き起こす最も大きな要因は門脈鬱滞であり,PAFを介してもたらされているものと考えられる.

キーワード
肝流入血行遮断, 血小板活性化因子拮抗薬, 門脈バイパス, ショック

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