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日外会誌. 91(10): 1581-1590, 1990


原著

胃切除後骨障害についての実験的, 臨床的研究

横浜市立大学 医学部第2外科(指導教授:土屋周二)

徐張 嘉源

I.内容要旨
胃切除後骨障害の病態と原因を明かにするため胃切後の320例に対し血清生化学検査,MD法(mi-crodensitometry)による骨障害の判定,臨床症状およびcalcium infusion testを行った.また,胃切後骨障害の原因を明かにするため,実験的に胃全摘ラットの術後摂食量,腸管からの脂肪およびCaの吸収,骨の形態的,組織的変化を検討した.
胃切除後症例のうち38%にMD法により骨障害が認められた.重症度II~III度の例では血清Ca値の低下,骨由来Al-P値の上昇を示し,65%に骨,関節痛など症状があった.Calcium infusion testの結果,骨障害例の尿へのCa排泄率は低く,骨粗髪症に比し骨軟化症の要素が主であった.骨障害の発生率は胃切除範囲の大きい程,または術後経過期間の長くなる程,高かった.
胃全摘ラットでは術後摂食量の減少,便中脂肪量の増加と45Ca吸収の低下が認められ,血清Ca,ビタミンD値の低下とPTH値の上昇を示した.骨皮質の菲薄化,骨髄質の骨梁の減少などが認められ,tetracycline二重骨標識法により,骨の形成率は対照群に比べ有意に低下した(0.8±0.3μm/日vs1.9±0.2μm/日p<0.01).また骨の灰分,Ca,Pも低値を呈した.
以上,胃切除後症例には骨障害が多発し,実験的に再現可能であった.その発生は摂食量の減少,脂肪,Ca吸収障害によるvitamin D,Ca不足が主因と考えられ,Caの骨から血流への移動がおこると推論された.

キーワード
胃切除後骨障害, MD 法, calcium infusion test, 骨形成率, 45Ca 吸収試験


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