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日外会誌. 91(10): 1574-1580, 1990


原著

AFP 産生早期胃癌の臨床病理学的特性

島根医科大学 第2外科

張 玉川 , 永末 直文 , 安部 俊一 , 河野 仁志 , 山野井 彰 , 内田 正昭 , 中村 輝久

(1989年10月14日受付)

I.内容要旨
教室の胃癌525例中, 早期胃癌は195例あり, 5年生存率86.9% (m癌93.5%, sm癌8 2.2%), 8年生存率77.2% (m癌93.5%, sm癌72.0%)であった.早期癌の再発7例はすべてsm癌の肝転移であり,うち2 例には肺転移が併存していた.7例中3例に術前および術後経過中に血清AFP値が上昇(20ng/ml以上)しており,また胃癌組織標本ではhepatoid pictureが認められ,AFP染色隔性であった.この3例を血清AFP値が正常の早期胃癌168例と臨床病理学的背景因子を比較したところ, ly, v, リンパ節転移, 肝転移の点でAFP産生癌のほうに高率なことがわかった.
この3例の転帰をみると全例胃切除後2年以内に死亡した.うち1例は,肝転移に対して拡大肝右葉切除術を含む2回の根治的肝切除が行われたにもかかわらず再び肝に再発して死亡した.
自験例を含むわが国のAFP産生早期胃癌報告19例中,予後判明の9 例の1年生存率は76.1%, 3年45.7%, 4年6カ月22.9%であった.肝転移は12例中7例(58.3%)に認められ,またn(+)の6 例中5 例が肝転移をきたして1例を除いて早期に死亡した.
以上より,1) 早期胃癌のなかでもAFP産生癌は術後早期に肝再発を起こす可能性が高い.2) AFP産生胃癌を早期に発見するための手段としては, たとえ血清AFP値が正常であっても原発巣のなかのhepatoid pictureの有無をチェックし,疑わしければAFP染色で確認する必要があり,3) AFP産生胃癌は予後不良なので, 判明次第, 予防的合併療法が必要であろうことなどが考えられる.

キーワード
AFP 産生胃癌, 早期胃癌, hepatoid picture, 肝転移

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