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日外会誌. 91(10): 1567-1573, 1990


原著

胃上部, 噴門部癌の横隔膜進展に関する実験的臨床的研究

久留米大学 医学部外科学第1講座(主任:掛川暉夫教授)

梅谷 博史

(1989年9月18日受付)

I.内容要旨
胃上部噴門部癌の転移,進展様式のうちとくに横隔膜へのリンパ行性転移経路について経内視鏡的に作製した家兎VX2腫瘍,噴門癌モデルを用いて検討した.噴門癌実験モデルは,大部分がBorrmann 2型ないし,Borrmann 3型を呈し,各リンパ節の転移率も臨床例と相関を示した.横隔膜全摘,全割による組織学的検索では,肉眼的に播種性転移を認めないと判断した20例中4例(20%)で,横隔膜リンパ管内にVX2腫瘍細胞の浮遊もしくは塞栓像を認めた.また,腫瘍口側噴門部漿膜下にCH44の点墨を行った結果,16例中6例(37.5%)で横隔膜リンバ管内にCH44の存在が確認された.しかしながら,無処置対照家兎ではCH44の横隔膜脈管内への流入は,みられなかった.
これらの実験結果をもとに,臨床例においても食道浸潤胃癌のうち,遠隔転移,腹膜播種性転移を認めなかった22症例を対象に,左開胸開腹にて,下部食道切除,胃全摘に加え,可及的横隔膜合併切除を行い,下部食道,胃,横隔膜を一体化した姿造り標本を作成し,組織学的に詳細な検討を行ったところ,22例中6例(27.3%)に主病巣と連続性の無い横隔膜リンパ管内に,腫瘍細胞の塞栓像ないしは浮遊像を認めた.これらの結果より,噴門部領域に発生,増殖した癌腫は現在まで,われわれがもっていた概念を越えて側方,すなわち横隔膜へも広範に進展しうることが明らかとなった.

キーワード
胃癌, 家兎 VX2 癌, 噴門部癌モデル, 横隔膜転移

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