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日外会誌. 91(8): 1031-1039, 1990


原著

Bidirectional cavopulmonary shunt に対する PEEP の影響に関する実験的検討

順天堂大学 医学部胸部外科

林辺 義人

(1989年9月30日受付)

I.内容要旨
雑種成犬8頭にbidirectional cavopulmonary shunt(B-CP shunt)を作製後,positive end-expiratory pressure(PEEP)を0cmH2Oより2cmH2Oごとに16cmH2Oまで付加し,各時点での血行動態(心拍数,中心静脈圧,肺動脈圧,大腿動脈圧,肺血管抵抗係数,末梢血管抵抗係数),shuntの中枢,末梢での肺動脈血流量(P-SF,D-SF),心拍出量を測定し,PEEPの心血管系及びB-CP shuntへの影響を実験的に検討した.(1)血行動態学的にはPEEPはCVP,FAP,CO,PVRIに対して低レベル(2,6,4,4cmH2O)より有意な影響を及ぼしたが,PAP,SVRIに対しては高レベル(10,8cmH2O)より影響が見られた.(2)PEEPはD-SFに対しては極めて低レベル(2cmH2O)より有意な低下をきたすが,P-SFに対しては6cmH2Oまで安全であった.(3)PEEPi+2cmH2O(i=0,2,4,… 14)時のPEEPicmH2O時に対するD-SF,P-SFの減少の割合を%Decrease in
D・P-SFp=i+2=(D・P-SFp=i+2-D・P-SFp=i/D・P-SFp=i)×100(YD, Yp)
CVPの上昇の割合を%lncrease in
CVPp=i+2=(CVPp=i+2-CVPp=i/CVPp=i)×100(X)
とすると,YD=4.1X-0.81(r=0.83),Yp=0.18X+6.10(r=0.35)であり,D-SF低下の機序としてはCVP上昇によるvenous returnの減少が関与していると思われた.(4)血液ガス検査では,PaO2はPEEP 2cmH2Oより有意な上昇がみられたが,pH,PaCO2,HCO3-には有意差がみられなかった.
以上の結果,bidirectional cavopulmonary shunt術後にPEEPを使用する場合はCVPなど血行動態(CO,FAP)に充分注意し,低レベルを維持すべきであると考えられた.

キーワード
bidirectional cavopulmonary shunt, PEEP, hemodynamics, shunt flow

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