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日外会誌. 91(8): 994-1000, 1990


原著

肝切除後の残存肝ヌクレオチド代謝に関する実験的検討
ー特に硬変肝における病態についてー

名古屋大学 医学部第2外科

黒川 剛 , 野浪 敏明 , 黒江 幸四郎 , 佐竹 満 , 原田 明生 , 中尾 昭公 , 高木 弘

(1989年7月5日受付)

I.内容要旨
大量肝切除後の残存肝ヌクレオチド代謝を正常肝群と肝硬変群で実験的に比較した.本研究ではアデニンヌクレオチド,グアニンヌクレオチドとこれらプリンヌクレオチドの中間代謝産物であるhypoxanthine,xanthineの動態を含めて術後2週間の段階まで検討した.その結果両群とも術後1日目に残存肝のATPレベルは経過中最低になり以後次第に回復した.GTPの濃度はATPの約3分の1であったがATPとparallelの変動を示した.肝硬変群・正常肝群の両群の比較では肝硬変群でATP,GTP,ヌクレオチド総量ともに正常肝群より術後3日目以降の回復が障害されていた.hypoxanthine,xanthineの細胞内の動態をみると両群とも術後著明に上昇しており,術直後のヌクレオチドレベルの低下には消費の亢進が関わることが示された.また正常肝群ではxanthineよりもhypoxanthineの上昇が著しいのに対して,肝硬変群では逆にhypoxanthineよりもxanthineの上昇が著しかった.これは肝硬変群ではhypoxanthineからxanthineへの反応が正常肝群に比較して亢進しているためと考えられ,術後プリンヌクレオチドの回復が障害される原因のひとつであると推定された.またこの反応はスーパーオキシドを産生することで知られており,特に肝硬変群の術後の細胞障害にこの系で産生されるスーパーオキシドが関与する可能性が示唆された.

キーワード
肝硬変, 肝切除, ヌクレオチド代謝, スーパーオキシド, エネルギー代謝

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