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日外会誌. 91(8): 967-971, 1990


原著

選択的近位迷走神経切離術後の神経再生に関する解剖学的研究

イリノイ大学 シカゴ校外科

𠮷田 順一

(1989年9月28日受付)

I.内容要旨
選択的近位迷走神経切離術において胃小弯側の漿膜を縫合すべきか否か,迷走神経再生の観点から検討するために神経軸索追跡法による動物実験を行った.この方法では軸索トレーサーを目的部位に注射すると,トレーサーが軸索流にて運ばれ,神経細胞体が標識される.今回の実験では胃体中部にトレーサーを注射して,脳幹から胃に節前遠心性神経線維(軸索)を送っている迷走神経背側運動核内の神経細胞を観察した.動物群は選択的近位迷走神経切離術時の漿膜縫合の有無について分け,1年後トレーサーを注射し,迷走神経背側運動核内で標識された神経細胞数を比較した.その結果,漿膜縫合を加えた群(平均神経細胞数2個)がそれを加えない群(同43個)より標識された神経細胞数が有意に少なかった.
脳幹の迷走神経背側運動核は胃の運動・酸分泌の重要な中枢であり,そこの神経細胞数は酸分泌能に影響すると考えられる.したがって選択的近位迷走神経切離術に胃小弯側の漿膜縫合を付加することにより,迷走神経再生を断ち,潰瘍再発の予防の一助となりうると推察される.

キーワード
選択的近位迷走神経切離術, 胃小弯側漿膜縫合, 迷走神経再生, 消化性潰瘍, 迷走神経背側運動核


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