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日外会誌. 91(7): 837-843, 1990


原著

大腸癌の細胞分裂能と臨床病理所見並びに予後との関連

1) 神戸大学 医学部第1外科
2) 神戸大学 医療技術短期大学部

川崎 浩史1) , 多淵 芳樹2) , 斎藤 洋一1)

(1989年7月12日受付)

I.内容要旨
stathmokinetic methodで癌細胞分裂能を測定した大腸癌43例を対象として,癌細胞分裂能と臨床病理学的所見並びにKaplan-Meier法による術後生存率との関連を検討した.
1)大腸癌細胞分裂能と臨床病理学的所見との関連では,腫瘍の平均直径・肉眼型・壁深達度・静脈侵襲・リンパ管侵襲・リンパ節転移および進行程度と癌細胞分裂指数(MI)との有意な関連は認められなかった.しかし,組織学的分類においては有意な関連が認められ,MIは高・中分化腺癌(分化型腺癌,N=37)20.72±8.75‰,低分化腺癌と粘液癌(未分化型腺癌,N=6)38.19±8.44‰と後者は前者よりも有意に(p<0,001)高かった.
2)大腸癌細胞分裂能と生存率との関連では,MI<20.00‰の低細胞分裂能群(N=17)の生存率曲線はMI≧20.00‰の高細胞分裂能群(N=23)よりも有意に(p<0.05)良好で,5年生存率はそれぞれ94.1%,69.6%であった.しかし,後者には未分化型腺癌が前者より多く,リンパ管侵襲高度例が多いという背景因子に差があった.背景因子に差が認められなかった分化型腺癌の低細胞分裂能群(N=17)の生存率曲線は,高細胞分裂能群(N=17)よりも有意に(p<0.05)良好で,5年生存率はそれぞれ94.1%,70.6%であった.
これらの成績は,大腸癌の細胞分裂能が組織型と関連を有しているが,他の臨床.病理学的因子とは独立しており,大腸癌患者の転帰を予測する因子として利用出来る可能性があることを強く示唆していると考えられる.

キーワード
大腸癌, 癌細胞分裂能, stathmokinetic method, 予後因子

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