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日外会誌. 91(7): 808-817, 1990


原著

食道のリンパ流
ーSPECT を併用した RI-Lymphography による検討ー

岡山大学 医学部第1外科(指導:折田薫三教授)

岡信 孝治

(1989年9月12日受付)

I.内容要旨
胸部食道癌の合理的リソバ節郭清の一助とすべく経内視鏡的RI-Lymphographyを食道癌23例,肺癌3例,胃癌5例に施行し食道リンパ流の検討を行った.全31例中19例にSingle Photon Emission Computed Tomography(以下SPECT)を応用した画像解析をおこない胸部食道リンパ流を三次元的に把握することに成功した.胸部食道のリンパ流はいずれの部位においても頸部,胸部,腹部の三領域に移行しうるが,Iu部では106最上部,104等への上方向流が,またEi部では①,②,③,⑦等の腹部方向へのリンパ流が主体であり,Im部は両者の中間的性格を持っていることが示された.Im部食道をさらにその上部と下部にわけて検討した結果ではIm上部はIu部に,またIm下部はEi部に類似したリンパ節への移行を認め,胸部食道のリンパ流は連続性に変化していることが示唆された.一方,傍食道リンパ節においてはRI注入部位より5cm以内のリンパ節において有意に取り込みが多く見られた.肺癌症例において胸部食道から肺,気管支方向へのリンパ流を調べた結果では,区域気管支周囲リンパ節(#13)までのRI-uptakeを全例に認め,食道癌において通常領域リソバ節と考えられている部位よりかなり遠位にまでリンパを注ぐことが確認された.また,胸部食道のリンパ流は食道壁在リンパ流のブロックにより大きく影響されることも明らかにした.RI-Lymphographyによるリンパ流の検討では当院における胸部食道癌切除例のリンパ節転移様式を反映し,胸部食道のリンパ流の検索に極めて有用であると思われた.また,当院における胸部食道癌手術症例の検討では,高率に転移が認められる最上部を含めた106,107の胸部リンパ節及び①,②,③,⑦の腹部リンパ節の郭清が傍食道リンパ節の郭清とともに重要であることが確認された.さらに,現行の食道癌取扱い規約における第1群リンパ節については,第2群以上のリンパ節郭清が施行された症例の中で,n1症例の占める割合が極めて少ないこと,および食道のリンパ流から考えた場合必ずしも第1群リンパ節としての性格を持たないなど問題が存在していることが指摘された.

キーワード
食道リンパ流, RI-Lymphography, SPECT, 食道壁内リンパ流ブロック

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