[書誌情報] [全文PDF] (3001KB) [会員限定・要二段階認証]

日外会誌. 91(7): 797-807, 1990


原著

磁気共鳴画像診断法 (MRI) を用いた食道癌リンパ節診断に関する研究

千葉大学 医学部第2外科

有我 隆光

(1989年7月28日受付)

I.内容要旨
新しい画像診断法である磁気共鳴画像診断法(MRI)を応用した食道癌リンパ節転移診断の有用性に関して食道癌70例について検討し以下の結論を得た.
撮像条件(パルス系列)ではSE400/40が周囲とのコントラストが良く食道癌病巣の描出に優れていた.撮像方向では横断,冠状断,矢状断のうち,縦隔内臓器の描出や血流イメージ出現頻度で冠状断が最も優れていた.
SE 400/40による冠状断による食道癌リンパ節転移診断能を切除44例の摘出リンパ節250個について検討した.大きさ別の描出能は,5mm未満で37%,5mm以上1cm未満で56%,1cm以上1.5cm未満で60%,1.5cm以上で80%であり,全体では250個中141個56%の描出率であった.部位別では深頸リンパ節25%,鎖骨上リンパ節63%,傍食道リンパ節17%であったが,気管周囲リンパ節87%,分岐下リンパ節91%,肺門リンパ節88%は良好に描出された.
転移の有無の鑑別について大きさ別転移率をみると5mm未満で26%,5mm以上1cm未満で17%,1cm以上1.5cm未満で17%であったが,1.5cm以上で46%と転移が高率となった.部位別の転移率では,鎖骨上リンパ節で1.5cm以上,気管周囲で1cm以上で高率となるが,分岐下では大きさによる差はなかった.
描出リンパ節の大きさが鎖骨上リンパ節,分岐下リソバ節,傍食道リンパ節では5mm未満でも,気管周囲リンパ節,深頸リンパ節では5mm以上で転移の可能性がある.転移陽性リンパ節は74%(34/46)が描出された.
X線CTとの比較では気管周囲,肺門,鎖骨上においてMRI冠状断が良好な症例が多かった.以上よりMRI冠状断は頸胸移行部,上縦隔,気管周囲の描出に優れ食道癌のリンパ節転移診断に極めて有用であることが明らかとなった.

キーワード
磁気共鳴画像診断法 (magnetic resonance imaging : MRI), 食道癌, リンパ節転移診断, 冠状断, 血流イメージ


次の論文へ >>

PDFを閲覧するためには Adobe Reader が必要です。