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日外会誌. 91(6): 778-781, 1990


症例報告

瘤空置術が有効であった傍大動脈瘤線維症の1例

*) 旭川医科大学 第1外科
**) 旭川厚生病院 循環器内科

小窪 正樹*) , 笹嶋 唯博*) , 西岡 洋*) , 堀尾 昌司*) , 直江 綾子*) , 久保 良彦*) , 原田 貴之**)

(1989年6月22日受付)

I.内容要旨
本邦では極めて稀な傍大動脈瘤線維症の1例を経験したので報告した.症例は65歳男性で,腹部拍動性腫瘤及び右下肢間歇性跛行を主訴に来院した.血管造影では腹部大動脈瘤と右総腸骨動脈狭窄をみとめ,CT scanでは肥厚した瘤壁及び瘤前方後腹膜帯状像とこれらの著明な造影効果を認めた.骨盤型閉塞性動脈硬化症を合併した傍大動脈瘤線維症と診断し腹部正中切開で開腹した.大動脈瘤は充実性で光沢ある灰白色を呈し,瘤中枢側では十二指腸及び下大静脈が強固に癒着し,末梢側では尿管を巻き込んでいた.剥離による副損傷を避ける目的で手術は瘤空置,大動脈一両大腿動脈Bypass術を施行した.病理組織所見では内膜は石灰化,硝子化等の硬化性変化が強く,中膜は菲薄化し,外膜は線維性肥厚が著明でリンパ球を主体とし形質細胞を混ずる高度の炎症細胞浸潤がみられた.術後経過は順調で57日目のCT scanでは瘤壁の造影効果は消失していた.本症の成因は不明であるが,瘤空置術式が有効であったことより,瘤の拍動が炎症を促進していることが推察された.

キーワード
傍大動脈瘤線維症, 腹部大動脈瘤, 瘤空置術

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