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日外会誌. 91(6): 760-765, 1990


原著

肺小細胞癌の特異的腫瘍マーカーとしての血中 gastrin-releasing peptide
ー血中 neuron-specific enolase との比較ー

東京医科歯科大学 医学部第2外科学教室(指導:三島好雄教授)

丸野 要

(1989年8月18日受付)

I.内容要旨
肺小細胞癌患者における血漿gastrin-releasing peptide(GRP)濃度を測定し,血漿neuron-specificenolase(NSE)濃度と比較することにより,その腫瘍マーカーとしての意義を検討した.immune-affinity chromatographyにより血中GRPを抽出し,radioimmunoassay(RIA)により血漿GRP濃度を測定した.また血漿NSE濃度の測定には,栄研イムノケミカル研究所のRIAキットを使用し,抽出操作を加えず直接血漿を添加して測定した.今回対象とした症例は対照者12例,未治療の肺小細胞癌患者19例,既に治療を受けていた症例18例,小細胞癌以外の肺癌患者21例である.complete response(CR)あるいはpartial response(PR)に達した肺小細胞癌患者10例と,progressive disease(PD)と判定された症例4例について,治療による血漿GRPおよびNSE濃度の変動を検討した.さらにCRに達した2例とPDと判定された1例に関し,細かく臨床経過を追って血漿GRPおよびNSE濃度を同時に測定して比較した.対照者12例における空腹時血漿GRP濃度は1.2±0.26pg/mlであった.未治療の肺小細胞癌患者19例中15例(79%)に4.6~58pg/ml,既に治療を受けていた症例18例中8例(44%)に4.2~82pg/mlという高GRP血症を認めた.これに対し,小細胞癌以外の肺癌患者はすべて,本測定系の測定限界以下の値であった.またCRあるいはPRと判定された症例では,血漿GRP濃度は10例中9例(90%)で治療後有意に低下したが,血漿NSE濃度は10例中6例(60%)で低下したのみであった.一方,PDと判定された症例では,血漿GRP濃度は治療後4例すべてで上昇したのに対し,血漿NSE濃度は4例中2例(50%)で上昇したのみであった.さらに2例のCR症例および1例のPD症例においては,血漿GRP濃度は血漿NSE濃度に比して,臨床経過をより正確に表現していた.以上の結果から,血中NSEと比較することにより,血中GRPは肺小細胞癌の良好な腫瘍マーカーとなりうることが示唆された.

キーワード
肺小細胞癌, 腫瘍マーカー, gatrin-releasing peptide, neuron-specific enolase, radioimmunoassay

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