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日外会誌. 91(6): 667-676, 1990


原著

大腸癌間質の組織反応について

1) 刈谷総合病院 外科
2) 名古屋市立大学 第1外科

宇佐見 詞津夫1) , 佐藤 幹則1) , 松本 幸三1) , 西脇 慶治1) , 大久保 憲1) , 小谷 彦蔵1) , 由良 二郎2)

(1989年6月14日受付)

I.内容要旨
癌腫の細胞性間質反応の意義については,古くから論義されている.そしてこれら癌に対する間質反応の主役はT細胞でありB細胞の関与はほとんど否定的といった論文が大半をしめている.我々の施設で手術を受け予後を追跡せしめた大腸癌136例の組織学的所見を精査した.大腸腫瘍内間質と腫瘍辺縁局所のリンパ球浸潤の程度についてみると,腫瘍内間質のリンパ球浸潤が強い症例ほど肝転移,腹腔内転移,リンパ節転移,深達度等の癌進展度は有意の差で抑制され,腫瘍辺縁においても同様にリンパ球浸潤が強いほどstageの低い症例が多かった.以上の結果より大腸腫瘍及び腫瘍辺縁のリンパ球浸潤は担癌生体の予後を左右する重要なパラメーターと考えられた.
更に,大腸腫瘍辺縁における局所免疫グロブリソ含有細胞の分布及びsecretory component(SC)の分泌と予後の関係についての検討を行なった.5年以上生存例(36例)と,5年以内死亡例(28例)について,それらを比較すると,5年以上生存例にはIgA含有細胞の分布の多い症例が多く,反対に5年以内死亡例には,IgA含有細胞の分布は少なく,予後の良い症例ほどIgA含有細胞浸潤が有意に多かった.また,予後良好な症例では腫瘍内でSC分泌能が亢進する傾向を示した.
以上の結果より液性免疫特にIgA systemはなんらかの形で癌の免疫に関与していると考えられた.

キーワード
大腸癌細胞性間質反応, T 細胞, 液性免疫

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