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日外会誌. 91(5): 645-648, 1990


症例報告

直腸癌術後(骨盤内臓全摘術)に発生した大動脈尿管瘻の1治験例

東京大学 医学部第2外科
*) 船橋市立医療センター 泌尿器科

高山 豊 , 多田 祐輔 , 高木 淳彦 , 佐藤 紀 , 白川 元昭 , 出月 康夫 , 藤田 道夫*)

(1989年6月5日受付)

I.内容要旨
直腸癌術後(骨盤内臓全摘術)に発生した大動脈尿管瘻の1例を報告する.
症例は64歳,男性.膀胱浸潤を伴う直腸癌のため,骨盤内臓全摘,人工肛門,尿管皮膚瘻造設術を施行され,5ヵ月後に尿管皮膚瘻よりの動脈性の大量出血のため入院した.大動脈造影にて,尿路変更された左尿管が大動脈を横切る部位に直径1.3cmの仮性大動脈瘤を認め,これが左尿管に穿破した大動脈尿管瘻と診断した.手術所見では,十二指腸の下方で左尿管が大動脈を横切っており,この部分で大動脈尿管瘻を形成していた.仮性大動脈瘤を健常な大動脈壁を一部つけて左尿管とともに切除し,大動脈壁欠損部をダクロン人工血管でパッチ閉鎖し,有茎大網で被覆した.左腎摘出術も併せて施行して救命した.なお,術中切除した大動脈壁の細菌培養でPseudomonas aeruginosaを検出したため,術後はこれが強い感受性を示す抗生剤を約2週間にわたって投与した.術後5年を経た現在,健在である.

キーワード
大動脈尿管瘻, 骨盤内臓全摘術, 動脈尿管瘻


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