[書誌情報] [全文PDF] (5369KB) [会員限定・要二段階認証]

日外会誌. 91(4): 464-471, 1990


原著

閉塞性黄疸および胆汁酸の胃粘膜防御・攻撃因子におよぼす影響
―特に,胃粘膜細胞での電解質輸送機能と胃酸分泌について

東北大学 医学部第1外科(主任:松野正紀教授)

神山 泰彦 , 佐々木 巌 , 成井 英夫 , 松田 好郎 , 松尾 哲也

(1989年4月17日受付)

I.内容要旨
閉塞性黄疸(以下,黄疸)および胆汁酸の胃粘膜防御・攻撃因子におよぼす影響を胃粘膜細胞での電解質輸送と胃酸分泌の面からin vivoおよびin vitroで実験的に検討した.体重250g前後のSD系雄性ラット99匹を用い対照群(単開腹),黄疸群(胆管を結紮切離),減黄群(胆管に挿入したチューブを2週後に解放し外瘻とする)を作成し,2週後各群の肝機能,血清総胆汁酸濃度および胆汁酸分画濃度,胃粘膜potential difference(以下,PD),胃酸分泌量を測定した.また,各群ラットより摘出した胃粘膜をUssing型のchamberに装着し胃粘膜経上皮電位,短絡電流量(Isc),経上皮電気抵抗(Rt)を測定した.対照群,黄疸群ではamilorideを粘膜側に投与して経上皮電位,Isc,Rtを測定した.さらに,無処置ラット胃粘膜の漿膜側に5mMのタウロコール酸ナトリウム(TCA)を投与して経上皮電位,Isc,Rtを測定し以下の成績を得た.
1.黄疸群の血清総胆汁酸濃度は対照群,減黄群に比べ高値を示し,胆汁酸分画としてはタウロコール酸が約25%を占めた.
2.胃粘膜PDは黄疸群で対照群に比べ低値を示し,減黄群では対照群に近い値を示した.
3.胃酸分泌量は黄疸群で対照群に比べ減少し減黄群で回復した.
4.経上皮電位,Iscは黄疸群で対照群に比べ低値を示し減黄群で回復した.Rtは各群間に差を認めなかった.amiloride投与前は経上皮電位,Iscは黄疸群で対照群に比べ低値を示したが10-4Mのamiloride投与でほぼ同値となった.
5.TCA投与により経上皮電位,Iscは有意に低下したがRtの低下は軽度であった.
以上より,黄疸時にはラット胃粘膜細胞においてNaイオンを主とした電解質輸送機能の障害がみられ,これは血中に増加した胆汁酸によることが示唆された.また,黄疸時には胃酸分泌の低下も認められ,胃粘膜防御・攻撃因子の低下が存在することが示された.

キーワード
閉塞性黄疸, 胆汁酸, 電解質輸送機能, 胃酸分泌, 短絡電流量


<< 前の論文へ次の論文へ >>

PDFを閲覧するためには Adobe Reader が必要です。