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日外会誌. 91(3): 424-430, 1990


原著

超音波断層法を用いた下肢深部静脈血栓症の診断

鳥取大学 医学部第2外科

応儀 成二 , 田中 孝一 , 伊藤 勝朗 , 原 宏 , 森 透

(1989年4月28日受付)

I.内容要旨
高分解能超音波断層法を応用して,下肢深部静脈血栓症(deep vein thrombosis:DVT)の部位診断に関する有用性を検討すると共に,治療法を選択する鍵となる血栓性状の質的診断の可能性について研究する.
対象は下肢DVT 81症例,106肢である.方法は5MHz・7.5MHzトランスデューサーを装着した超音波断層装置で,下大静脈から膝窩静脈まで描出して,圧迫法により各静脈で血栓の存在を診断した.総大腿静脈に血栓が存在した71下肢では,血栓をエコー解析(相対的エコーレベル,エコーパターン)と硬度によりエコー型に分類した.診断法の基準として,下肢静脈造影を18肢で,1また手術(手術所見や病理検査)を6肢で施行して超音波断層法の診断精度を評価した.静脈造影を診断法の基準とした超音波断層法のtotal accuracyは,血栓症の診断は100%,血栓範囲の診断は83%であった.部位別のtotal accuracyは,全て90%以上であったが,腸骨静脈のsensitivityは90%以下にとどまった.総大腿静脈血栓のエコー型をA,B,Cの3基本型と8亜型に区別した.A型(al,a2)は均一エコー,B型(b1,b2,b3)は不均一エコー,C型(c1,c2,c3)は血栓エコーの縮小が特徴である.A,B型は1ヵ月以内に多く,またC型は1ヵ月以降に多く見られた.病理診断との対比により,A-a1は赤色血栓,A-a2は赤色血栓が主体の混合血栓,B-b2は白色血栓あるいは白色血栓が主体の混合血栓,C-c3は器質化血栓に一致した.
結論として,1.DVTに関する超音波断層法は,血栓存在,並びに血栓範囲の診断目的で臨床応用可能なスクリーニング検査である.2.超音波断層法による血栓のエコー解析と硬度から,A,B,Cの3基本型(8亜型)が区別された.そのエコー型と病理診断の対比から,エコー分類は血栓の質的診断に有用な指標となりうることが示唆された.

キーワード
深部静脈血栓症, 超音波断層法, 血栓性状, 静脈の圧迫法, 無侵襲的診断法


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