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日外会誌. 91(3): 419-423, 1990


原著

𦜝帯静脈グラフト (Dardik Biograft) による下肢血行再建術の遠隔成績

北海道大学 医学部第2外科

松居 喜郎 , 郷 一知 , 佐久間 まこと , 安田 慶秀 , 田辺 達三

(1989年4月17日受付)

I.内容要旨
1979年6月より,われわれは,Dardik Biograftを,再手術などで良好な自家静脈の得られない場合,あるいは非解剖学的バイパス施行時などに,代用血管として下肢血行再建術106例,133肢に対し137本使用した.原疾患はASOが大半を占めていた.術前症状は,安静時疾痛,潰瘍が全体の29%で,間欠性破行が65%であった.施行手術は,F-Pバイパス84例, F-Tバイパス1例, F-Fバイパス32例,Ax-Fバイパス21例であった. Biograftを選択した理由は,再手術20例,高齢29例,脳血管疾患の合併5例,大伏在静脈不良7例,虚血性心疾患の合併17例,悪性腫瘍の合併6例などであった.術後早期合併症として,出血1例,グラフト感染2例,急性血栓閉塞6例があり,遠隔期合併症としては,グラフト瘤化3例がみられた.各術式別累積開存率は,1年/3年/5年開存率では,F-Pバイパスで93%/75%/75%,F-Fバイパスで85%/85%/85%と良好であったが,Ax-Fバイパスでは54%/27%/27%と有意に開存率は低かった.F-Pバイパスで,末梢吻合部が膝上部(n=49)と膝下部(n=30)では,膝上部の方がやや良好な開存性を示したが,両者に有意差は無かった.三分岐以下の血行状態が不良なものは低い開存性を示したが,良好な例に比し有意差は無かった.リスクファクターとして,糖尿病の既往の有無,喫煙習慣の有無,また術後ワーファリン使用の有無につき検討したが,各因子の有無により開存率に有意差は生じなかった.当科の自家静脈使用F-Pバイパス症例83例とDardik Biograft使用症例の累積開存率の比較では,術後7年までは両群間に有意の差は無かった.以上よりDardik BiograftはF-P,F-Fバイパスでは自家静脈に匹敵する開存成績が得られるが,遠隔期には動脈瘤の発生などの問題も生ずるため,慎重な追跡調査が重要である.

キーワード
膀帯静脈, Dardik Biograft, 下肢血行再建術, グラフト瘤化

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