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日外会誌. 91(3): 393-400, 1990


原著

ラット移植腎浸潤細胞の表面抗原および機能解析

京都府立医科大学 第2外科(指導:岡 隆宏教授)

濱島 高志

(1989年5月17日受付)

I.内容要旨
近交系ラット腎移植モデル(BN,RT-1n→LEW,RT-11,平均生存日数7.8±0.6日)を用いて,移植後3日目,6日目における,移植腎および他の部位(脾,末梢血,移植腎局所リンパ節)のリンパ球の表面抗原,細胞障害活性,サイトカイン産生能を検討した.
移植腎浸潤細胞のモノクローナル抗体陽性率の変化は,OX-19陽性細胞(panT)が3日目:32.5±6.6%→6日目:67.8±10.8%(p<0.01),OX-8陽性細胞(Ts/c)が26.9±10.5%→39.4±8.2%(p<0.05),W3/25陽性細胞(Th)が20.4±4.8%→35.8±3.0%(p<0.01)へとそれぞれ有意に増加した.また,移植腎浸潤細胞のドナー細胞に対する特異的細胞障害活性は53%(E/T=50)と,他の部位のリンパ球(脾細胞21%,末梢血単核細胞19%,リンパ節細胞5%)に比して有意(p<0.01)に強い値を示した.移植腎浸潤細胞からのBSF-2産生量は,3日目:17.7±4.2U/ml,6日目:67.5±13.2U/mlと,拒絶反応の進行とともに著明に増加し(p<0.05),特に6日目においては他の部位のリンパ球よりも有意に高い値を示した(p<0.05).しかし移植腎浸潤細胞のIL-2,IL-3,γ・IFN産生量は3日目,6日目ともに脾細胞,局所リンパ節細胞のそれよりも低かった.以上の結果より,移植片には拒絶反応の進行に伴って,キラーT細胞,ヘルパーT細胞ともにその割合が増加し,またその活性能も他の部位のリンパ球に比べて高いことが示唆された.また,移植腎浸潤細胞の産生するサイトカインの種類が脾細胞,局所リンパ節細胞のそれと異なり,ヘルパーT細胞のタイプが異なる可能性が考えられた.

キーワード
ラット, 腎移植, 浸潤細胞, フェノタイプ, サイトカイン


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