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日外会誌. 91(3): 373-385, 1990


原著

大腸癌の静脈侵襲に関する臨床病理学的研究

久留米大学 医学部第1外科
*) 久留米大学 第2病理

白水 和雄 , 磯本 浩晴 , 梶原 賢一郎 , 掛川 暉夫 , 森松 稔*)

(1989年4月15日受付)

I.内容要旨
大腸癌における静脈侵襲の真の意義を明らかにするために長期間にわたるprospectiveな研究を行い以下の結果を得た.①静脈侵襲の程度はStage,リンパ節転移,深達度,壁外浸潤面積が高度になるに従いv2,v3の中等度以上の静脈侵襲が高率であった.②同時性肝転移ではv2,v3が高率にみられ,また形態分類ではEF群(塞栓型に浮遊型を混在した静脈侵襲)が,層別分類では壁内≦壁外群(壁外静脈侵襲が多いもの)が高率であった.即ちH1症例ではv2が41%に,EF群が21%に,壁内≦壁外群が59%に認められた.H2症例ではv2,v3がそれぞれ30%,60%に,EF群が30%に,壁内≦壁外群が60%に認められた.H3症例ではv3が60%に,EF群が51%,壁内≦壁外群が57%に認められた.③異時性肝転移はv0,v1群ではそれぞれ5%以下の発生であったが,v2,v3群では22%と高率に発生した.またEI(F)群(塞栓型に内膜型(一部浮遊型)を混在するもの)では15%に,EF群では19%に,壁内〉壁外群(壁内静脈侵襲が多いもの)では10%に,壁内≦壁外群では16%と高率に発生した.④進行癌における治癒切除例の6年生存率は,程度別ではv0群,v1群,v2群,v3群がそれぞれ97%,85%,57%,51%であった.形態別ではE群(塞栓型のみのもの),EF群,EI(F)群がそれぞれ83%,65%,55%であった.層別分類では壁内群(壁内静脈侵襲のみのもの),壁内〉壁外群,壁内≦壁外群がそれぞれ86%,80%,55%であった.⑤非血行性再発については,v3群では19.4%,EI(F)群では13.6%,壁内≦壁外群では15%と高率に発生した.以上のことより,①静脈侵襲の程度は癌の進行度,肝転移,非血行性転移,生存率に関連性が深く,また静脈侵襲の形態や層別分類も肝転移,非血行性転移,生存率に影響を及ぼすものと考えられた.②著者が確立した静脈侵襲の診断基準は生存率を判定する良い指標となることが実証された.

キーワード
静脈侵襲, 大腸癌, 大腸癌の生存率


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