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日外会誌. 91(3): 354-359, 1990


原著

早期胃癌におけるリンパ節転移の指標としての細胞増殖活性
in vitro BrdU labeling の臨床応用

金沢大学 医学部第2外科

大山 繁和 , 米村 豊 , 鎌田 徹 , 小坂 健夫 , 山口 明夫 , 三輪 晃一 , 宮崎 逸夫

(1989年4月21日受付)

I.内容要旨
早期胃癌におけるDNA ploidy pattern,S phase fraction(SPF)の臨床的意義を検討する目的で,in vivo BrdU labelingが施行された早期胃癌61例について,DNA ploidy pattern,SPFとリンパ節転移との関連をみるとともに,術前の生検材料を用いてin vitro BrdU labelingを施行し,その臨床応用の可能性を検討した.
早期胃癌では,DNA aneuploidyはリンパ節転移が多く,SPFが8%以上の症例はSPFが8%以下の症例に比し有意(p<0.05)にリンパ節転移率が高率(おのおの27.9%,5.6%)であった.
in vitro BrdU labelingをヌードマウス移植ヒト胃癌・大腸癌10株を対象に基礎的検討を行ったところ,in vitro,in vivoのSPFはほとんど一致した.そこで,胃癌30例を対象に臨床的検討を行った.早期胃癌ではDNA ploidy patternが13例中11例に一致し,またSPFも相関がみられた(p<0.01).一方,進行胃癌では,DNA ploidy patternは17例中3例に一致したのみであり,SPFも相関がみられなかった.癌巣内のDNA ploidy heterogeneityは,早期胃癌では検索しえた9例中2例(22.2%)に,進行胃癌では17例中12例(70.6%)に認められた.
これらのことより,進行胃癌では,高率に癌巣内にDNA ploidy heterogeneityが認められるため成績の信頼性に乏しいが,早期胃癌ではin vivoの成績と相関することより,早期胃癌におけるリンパ節転移の指標としてのin vitro BrdU labelingの臨床応用の可能性が示唆された.

キーワード
early gastric cancer, in vitro BrdU labeling, lymph node metastasis, heterogeneity

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