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日外会誌. 91(2): 255-261, 1990


原著

甲状腺分化癌に対する上縦隔郭清の適応に関する検討

信州大学 医学部第2外科

麻沼 和彦 , 菅谷 昭 , 小林 信や , 春日 好雄 , 増田 裕行 , 千賀 脩 , 飯田 太

(1989年3月22日受付)

I.内容要旨
甲状腺分化癌の中には上縦隔リンパ節郭清を必要とする症例があるが,その適応基準は確立されていない.今回,上縦隔リンパ節郭清の適応について検討を行い,知見を得た.
対象:1984年1月から1987年12月までに,信州大学第2外科において上縦隔リンパ節郭清を施行した初回治療例17例,初回手術時頸部リンパ節郭清を行い,再手術時に上縦隔リンパ節郭清を施行した5例,および今回の検討時点で再発がみられていない198例(縦隔郭清非施行例)を対象とした.
結果:初回治療例17例中,上縦隔リンパ節転移陽性例(M群)は6例(35%),陰性例(NM群)は11例(65%)であり,この2群の比較検討の結果は以下の通りであった.CTおよび201T1シンチグラムで上縦隔リンパ節転移が疑われた症例は,M群3例,NM群1例.平均年齢は,M群43歳,NM群51歳.原発腫瘍の最大径の平均は,M群5.1cm,NM群2.9cm.腫瘍が左葉または両葉に存在するものは,M群5例(83%),NM群5例(45%).頸部リンパ節転移は,M群がNM群に比べ,腫瘍側,健側ともに多数認められ,特に健側のIII,V,VI群に著明であった.また,再手術時に上縦隔リンパ節郭清を行った5例では,初回手術時,健側V,VI領域に転移リンパ節を認めた2例にのみ上縦隔リンパ節転移を認めた.さらに,非縦隔郭清例198例の検討では,腫瘍の最大径が3.0cm以上で,年齢50歳以下の22例のうち7例(32%)に,健側のV,VI領域に転移リンパ節が認められた.
以上の臨床的検討の成績より,甲状腺癌の上縦隔リンパ節郭清の適応条件を以下の3項目とした.①CTあるいは201T1シンチグラムで,縦隔リンパ節に転移陽性所見を認める場合,②健側のV,VI領域にリンパ節転移を疑わせる所見を認める場合,③50歳以下の男性で,腫瘍の最大径が3.0cm以上で,腫瘍が左葉に局在する場合.

キーワード
甲状腺分化癌, 上縦隔リンパ節転移, 上縦隔リンパ節郭清, 甲状腺リンパ流

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