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日外会誌. 91(2): 214-222, 1990


原著

イヌ初代培養肝細胞を用いた平板積層型人工肝臓の有用性の検討

北海道大学 医学部第1外科(指導:内野純一教授)

長谷 泰司

(1989年4月5日受付)

I.内容要旨
イヌ初代培養肝細胞を用い,平板積層型人工肝ユニットを組み込んだハイブリッド型人工肝システムを作製し,無肝犬に対する有効性を検討した.本人工肝システムは,ビーグル犬肝の約30%に相当する60~80gの肝細胞を容し,生体系回路と人工肝モジュール系回路よりなる.
実験群はビーグル犬を肝全摘した後,I群(n=6):無処置群,II群(n=4):血漿灌流群,III群(n=4):人工肝接続群の3群とした.各群について肝全摘後の生存時間,蛋白合成能,血清アンモニア解毒能,アミノ酸代謝能等を検討した.
無肝犬の生存時間は,I群21.3±5.6時間,II群27.8±4時間,III群では平均55±10.3時間,最長65時間であり,無処置群の約3倍に延長した.死因は,I,II群では肝不全であるのに対し,III群では循環不全が主因と考えられた.血清アルブミン値,フィブリノーゲン量,APTT活性値は54~60時間まで,対照群に比べ良好な値を維持した.とくに,血清アンモニア値は低値で推移し,血漿アミノ酸値の改善も認めた.
以上の結果より,本人工肝システムは,肝の有する代謝,合成,解毒等の機能を総合的にもつものであることが確認され,人工肝としての可能性をもつことが示唆された.

キーワード
ハイブリッド型人工肝臓, イヌ初代培養肝細胞, 無肝犬, 生存時間

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