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日外会誌. 91(2): 174-183, 1990


原著

組織内IV型コラゲナーゼ活性値測定法の確立とそれによる胃・肺癌組織内同酵素活性に関する研究
ーI型コラゲナーゼ活性および病理組織学的所見と対比してー

慶応義塾大学 医学部外科学教室(指導:阿部令彦教授)

窪地 淳

(1989年4月4日受付)

I.内容要旨
基底膜コラーゲン分解酵素であるIV型コラゲナーゼの悪性腫瘍の浸潤・転移への関与を解明することを研究目的として組織内同酵素活性値測定法を確立した.さらに,ヒト胃癌7例および肺癌21例について組織内I型およびIV型コラゲナーゼ活性値を測定し,病理組織学的所見と対比検討した.
胃癌に関して癌中心部,癌先進部,癌隣接非癌部胃粘膜,遠隔非癌胃粘膜に分け比較すると,I型コラゲナーゼ活性は癌先進部で高く,IV型コラゲナーゼ活性は癌隣接胃粘膜,癌先進部で高い値を示した.胃癌の組織学的脈管侵襲の程度との関連をみると,脈管侵襲の著明な癌組織でIV型コラゲナーゼ活性は高い傾向を示した.肺癌では腫瘍の大きさとI型コラゲナーゼ活性との間に程度の弱い正の相関関係が統計的には認められた.肺癌を組織型別に比較すると,I型コラゲナーゼ活性は扁平上皮癌が腺癌に比較して高いのに対し,IV型コラゲナーゼ活性は逆に腺癌が扁平上皮癌よりも高かった.
以上の結果から,I型コラゲナーゼ活性は悪性腫瘍の局所浸潤に,IV型コラゲナーゼ活性は悪性腫瘍が組織をとりまく基底膜を破壊し浸潤する過程ないし悪性腫瘍が脈管壁を浸潤・破壊しリンパ・血行性遠隔転移する過程に関与する可能性が示唆された.

キーワード
cancer invasion, cancer metastasis, type I and type IV collagenases, basement membrane, stomach and lung cancers

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