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日外会誌. 91(1): 150-153, 1990


症例報告

膵仮性嚢胞に併存した膵体部癌の1手術例

東京医科歯科大学 医学部第1外科

長浜 雄志 , 五関 謹秀 , 井上 芳徳 , 妙中 俊文 , 中村 宏 , 羽生 丕 , 遠藤 光夫

(1988年12月2日受付)

I.内容要旨
膵仮性嚢胞と膵癌の併存例の報告は稀であるが,併存した膵仮性嚢胞を契機として手術を行い切除し得た膵体部癌の1例を経験したので報告する.
症例は53歳男性.61年8月心窩部膨満感を自覚,他院にて膵嚢胞を指摘され,同年11月当院入院,飲酒歴,腹部外傷歴には特記すべきことはなかった.画像診断上膵尾部に径7cmの嚢胞を認め,生化学的にはCA19-9が310と高値で,糖尿病を合併していた.膵仮性嚢胞と膵癌の併存との疑診にて,膵体尾部切除脾摘術を施行.嚢胞の頭側に径3cmの腫瘤を認め,迅速病理にて腺癌との診断でリンパ節郭清を加えた.組織学的に高分化腺癌で,一部で後腹膜に浸潤を認め,10ヵ月後に再発死亡した.
この様な症例に対しては,各種検査結果のみでなくその臨床経過にも注意を払う必要があると考えられる.

キーワード
膵体部癌, 膵仮性嚢胞


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