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日外会誌. 91(1): 86-94, 1990


原著

肝内結石症切除肝の構築病理学的研究
―肝内胆管,肝内門脈,肝実質の三次元コンピューターの画像解析―

1) 東北大学 医学部第1外科
2) 東北大学 抗酸菌病研究所病理
3) 仙塩総合病院 

高橋 良延1) , 高橋 徹2) , 伊勢 秀雄1) , 松野 正紀1) , 高橋 渉3) , 佐藤 寿雄3)

(1988年7月29日受付)

I.内容要旨
肝内結石症における肝内胆管の特有な変化に関して,病態と発生機序を明らかにする目的で,8例の切除肝から連続組織切片を作製し,三次元画像再構成法を用いて肝内胆管の形態学的変化を解析した.さらに本症に伴う肝内門脈の二次的閉塞が肝実質の荒廃をもたらす可能性に注目し,肝の変化を計量組織学的に検討した.再構成には著者らが開発した三次元コンピューター画像処理システムを用いた.
三次元的に,本症における肝内胆管は膨大部の連続する数珠状の形,扁平化と折れ曲りなど複雑な褶曲構造を呈していた.本症の病態上重視される胆管狭窄部は,一般に分岐部に局在し,形態からはbottleneck状,slit状の2型に区別された.しかし,胆管径を計測し,伴走する肝動脈枝の径との比較により基準化を行ったところ,いわゆる狭窄部でさえ実は拡張しており,見掛け上の狭窄にすぎないことが確められ,胆管の形態変化の本質が純粋な拡張であることが明らかになった.また症例間の比較から,胆管は最初は単純なspindle状拡張,最終的には複雑な褶曲構造を呈するに至り,この過程には門脈狭窄による虚血性の肝実質萎縮,またそれに伴う組織の収縮が関係すると考えられた.すなわち多くの症例で直径0.5mm程度の門脈には血栓の器質化による高度の狭窄があり,それに伴い肝実質は萎縮・収縮している.他方,胆管は径の増大と同時に縦方向にも拡張すると考えられ,このことが肝組織収縮と相まって複雑な胆管の変形を生ずるものと推察された.
胆管に高度の拡張のある肝組織,また結石を充満し盲端に終る胆管嚢胞の存在は胆管炎の母地となるばかりでなく,実質組織の二次的な萎縮により概ね肝代謝機能は廃絶状態にあることから,肝切除の必要性を十分に裏付ける結果と解釈された.

キーワード
肝内結石症, 三次元再構成, 胆管狭窄, 肝内門脈狭窄, 肝実質萎縮

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