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日外会誌. 91(1): 68-76, 1990


原著

OK-432腫瘍内注入による胃癌所属リンパ節リンパ球の抗腫瘍能の増強

岡山大学 医学部第1外科教室(主任:折田薫三教授)

小林 元壮

(1988年10月3日受付)

I.内容要旨
癌所属リンパ節は,腫瘍局所とともに癌に対する免疫監視機構の最前線と考えられるが,そのnatural cytotoxicityは著しく低い.そこで,癌巣局所にbiological response modifier(BRM)を注入し,これらの領域の免疫反応を増強させる試みが行われている.今回OK-432の腫瘍内注入によるリンパ節リンパ球(LNL)への影響を,直視下に細胞障害の進行をbinding phaseとkilling phaseに分け観察するsingle cell assayを用いて検討した.
OK-432腫瘍内注入により,LNLの標的細胞とのbindingには差は認められなかったが,killingでは,注入群13.5±9.0%,非注入群6.8±3.9%と有意に活性が増強され(p<0.05),キラー細胞の出現頻度(%killer)も,注入群2.86±2.63%,非注入群1.36±0.77%と上昇した.また,注入群は強い活性を示す群と反応を示さない2群に分かれる傾向を認めた.モノクロナル抗体と補体の処理から,OK-432腫瘍内注入により活性化されるキラー細胞は,NK細胞であることが推定された.臨床病期をみると,活性の上昇が認められた8例は,stage I 7例,stage II 1例であり,stage III以上の進行例には活性の上昇を認めなかった.
LNLのリンパ球サブセットでは,OKT8で注入群10.28±2.16%,非注入群13.46±3.93%と注入群で低く(p<0.05),OKT4/OKT8比は注入群4.82±1.02,非注入群2.88±0.87と注入群で高かった(p<0.01).胃癌取扱い規約のリンパ節群別にみると,第1群で活性の上昇を認めた症例では,第2,第3,第4群に至るまで活性の上昇が得られたが,非領域の小腸間膜リンパ節では,活性の上昇を認めなかった.

キーワード
胃癌, 所属リンパ節リンパ球 (LNL), OK-432, Single cell assay, Natural killer (NK) 活性

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