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日外会誌. 91(1): 23-28, 1990


原著

微弱直流電流による癌局所療法
(著効した2症例を中心に)

東京医科大学 外科

松島 康 , 劉 栄森 , 田近 栄四郎 , 永井 完治 , 輿石 義彦 , 於保 健吉 , 早田 義博

(1989年3月7日受付)

I.内容要旨
癌の進行期で,皮膚や皮下の軟部組織に腫瘍があり,化学療法や放射線療法などの保存的療法に抵抗性がある場合,また,病巣が外科的に切除困難な例に対して,微弱直流電流を通電する通電療法あるいは,抗癌剤の全身投与を併用する,通電化学療法を試行した.治療法は,白金またはステンレス針を両極とも腫瘍内に留置し,約1時間,10V前後の電圧で通電するもので,抗癌剤を併用する場合は,ADMやBLMなど電極周囲集積性のある抗癌剤をベースとした単剤あるいは多剤の静脈内投与を通電開始から約1時間かけて行った.症例は15例で,組織型は,腺癌8例,扁平上皮癌2例,腺様嚢胞癌1例,大細胞癌1例,粘表皮癌1例,軟骨肉腫1例,悪性リンパ腫1例,良性腫瘍1例であった.このうち評価対象を他合併療法などを除いた10例11カ所とした.組織学的検査は6病巣に対して行われそのいずれにも治療効果を認めた.腫瘍縮小は9病巣で認められたが縮小率はまちまちであった.2例では通電のみで完全な肉眼的腫瘍消失をみ,抗癌剤を併用した1例では著明な腫瘍縮小により切除が可能となった.合併症としては,おもに治療中の軽い疼痛と治療後の微熱であった.疼痛は頚部領域の通電に際して特に強い傾向にあったがいずれも特別な治療は要さなかった.ステンレス針は同様の治療効果を示したが,電極の電気分解による治療後の遺残電極の危惧から臨床応用にはさらに検討が必要と考えられた.通電化学療法群は通電と化学療法を別々に行った場合にくらべて腫瘍縮小効果が強くみとめられた.両電極を腫瘍内に留置して行う選電療法,通電化学療法は合併症や患者への苦痛も少なく癌の局所療法の一つとして有用な方法と考えられた.

キーワード
癌局所治療, DC療法, 直流通電療法, 通電化学療法

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