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日外会誌. 91(1): 17-22, 1990


原著

外傷患者の創傷治癒因子に関する検討

市立札幌病院 救急医療部

丸藤 哲 , 牧瀬 博 , 手戸 一郎

(1989年1月23日受付)

I.内容要旨
多発外傷患者27例を対象として,創傷治癒因子である,活性血液凝固第XIII因子(XIIIa),α2Plasmininhibitor(α2PI),Fibronectin(FN)を受傷直後(0病日)より3病日まで測定した.測定結果をもとに,(1)外傷直後の三因子の変化と相関,および,(2)Injury Severity Score(ISS)により分類した外傷の重症度(重症群=ISS-L,軽症群=ISS-S),(3)緊急手術施行の有無〔OP(+)群,OP(-)群〕,(4)汎発性血管内凝固症候群(DIC)合併の有無〔DIC(+)群,DIC(-)群〕がこれら三因子に与える影響について検討した.
1)XIIIaは外傷後に有意の変動を認めないがα2PI,FNは0病日を最低値として2,3病日に有意に増加した(α2PI:p<0.001,FN:p<0.05).FNとXIIIa,α2PIは有意(p<0.01)の正相関を認めた.2)XIIIaは外傷の軽重で有意差を認めないが,α2PI,FNは0,1病日でISS-L群が有意に低値となった(α2PI:0;p<0.01,1;p<0.05,FN:0,1;p<0.05)ISSとXIIIaには有意の相関はないが,ISSとα2PI(p<0.01),FN(p<0.05)間には有意の負相関を認めた.3)XIIIa,α2PI,FNともにOP(+),(-)群間で有意差を認めなかった.4)XIIIa,α2PI,FNともにDIC(+)群で0,1病日で有意に低値となった(XIIIa:0;p<0.001,1;p<0.01,α2PI:0,1;p<0.01,FN:0;p<0.01).2病日には0病日よりXIIIa,FN(p<0.05),α2PI(p<0.01)と増加したが3病日にはα2PI(p<0.05),FN(p<0.05)は再度(DIC(-)群より有意に低値をとった.
外傷患者のα2PI,FNは外傷直後に減少しその重症度に比例するがXIIIaは外傷の影響を受けないと考えられた.外傷後の手術による組織損傷はXIIIa,α2PI,FNの動態を修飾しなかったが,DICを合併した場合は,三因子ともに低値となり,輸血等による三因子の補充をおこなってもα2PI,FNを正常値に維持することは困難と考えられた.

キーワード
外傷, 創傷治癒, 血液凝固第 XIII 因子, Fibronectin, α2Plasmininhibitor

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