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日外会誌. 90(11): 1932-1938, 1989


原著

乳癌細胞におけるエストロゲン依存性プラスミノーゲンアクチベーターについての実験的・臨床的研究

熊本大学 医学部第2外科

山下 純一 , 稲田 一雄 , 杏尾 修一 , 河野 一朗 , 三隅 厚信 , 赤木 正信

(1988年12月21日受付)

I.内容要旨
DMBA誘発ラット乳癌を用い,プラスミノーゲンアクチベーター(PA)のエストロゲン依存性をin vivo, in vitroで検討した.DMBA乳癌のPA活性は卵巣摘除により著明に減少するが,エストロゲンの投与により回復し,またこの回復現象はアクチノマイシンD,シンクロヘキシミド,タモキシフェンにより抑制された.さらにDMBA乳癌の初代培養細胞を用いたin vitroの系においても,エストロゲンの投与によりPAの産生がみられ,この現象は細胞の増殖を伴わなかった.これらの結果は,DMBA乳癌におけるPAのde novoの合成が,エストロゲンにより転写レベルで調節されていることを強く示唆するものであり,さらにDMBA乳癌におけるエストロゲンの作用には, in vivoにおいてプロラクチンを介さない直接経路が存在している可能性をも示唆するものである.
次にヒト乳癌において, PAが乳癌のホルモン依存性を表わす新しい指標になり得るか否かを確認するため, 160例のヒト乳癌組織においてそのPA活性とホルモンレセプターの関連性を検討した.エストロゲンレセプターおよびプロゲステロンレセプターが共に陽性の症例は,陰性の症例に比し有意に高いPA活性を示し,さらにその結合部位数とPA活性の間には陽性関係が存在することが判明した.以上の結果からPAは今後ヒト乳癌のホルモン依存性を予知するための有効な指標となり得ることが確認された.

キーワード
プラスミノーゲンアクチベーター, DMBA 乳癌, ヒト乳癌, ホルモン依存性

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