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日外会誌. 90(11): 1907-1914, 1989


原著

ブタ同所性肝移植における術中循環動態の研究
ーとくに麻酔法と無肝期バイパス流量の検討ー

岡山大学 第1外科(主任:折田薫三教授)

見市 昇

(1988年12月9日受付)

I.内容要旨
ブタを用いて同所性肝移植実験を行ってきたが,無肝期体外バイパス中,バイパス解除時の循環動態は不安定で,循環動態を良好に維持できなかった例では移植肝の機能発現にも悪影響を与えたと考えられた.循環動態を良好に維持することは移植肝の機能発現のための必須条件であるという考えから, とくに麻酔法とバイパス流量の面より術中循環動態を検討した.
手術方法は, Calneらの方法に準じ肝上部下大静脈,門脈,肝下部下大静脈,肝動脈の順で再建し,無肝期はY型Veno-Venousバイパスで維持した.術中,心電図,動脈圧とSwan-Ganzカテーテルを使用して肺動脈圧,心拍出量,肺動脈楔入圧,中心静脈圧をモニターした.そして,開腹時(麻酔導入安定期),バイパス開始30分後,バイパス解除後,閉腹時の4点で比較検討した. Graft虚血時間は平均138分,バイパス時間は平均69分であった.
〔麻酔法による検討〕NLA麻酔(n=5), GOS (sevoflurane)麻酔(n=5), GOF麻酔(n=4)の比較では, NLA麻酔は動脈圧維持,バイバス後の心拍出量の回復が他の2法に比べ劣っていた.最も循環動態が安定し肝毒性もないGOS麻酔が3法のなかでは最も肝移植に有用であると考えられた.
〔バイパス流量による検討〕低流量群(19±2ml/kg/min, n = 7) と高流量群(31±4ml/kg/min,n=6)とで比較検討した.また,無肝期バイパスモデルを作製し,流量を20, 30, 40ml/kg/minに設定し,輸液速度を一定として120分後まで循環動態を測定し参考にした.高流量群の方が低流量群に比べてバイパス中,バイパス解除後の心拍出量が良好で,肺動脈圧の変化も少なかった.低流量群は許容範囲内であったものの,モデル実験からも安全域とは考えられなかった.また,モデル実験からブタにおいては流量30ml/kg/minが適正流量に近いと推測された.

キーワード
ブタ同所性肝移植, 循環動態, 無肝期, バイパス流量, セボフルレン (Sevoflurane)

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