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日外会誌. 90(11): 1834-1839, 1989


原著

モノクローナル抗体 KM10 と抗 CEA 抗体の比較検討

神戸大学 医学部第1外科(主任教授:斎藤洋一)

曽山 信彦 , 山本 正博 , 大柳 治正 , 斎藤 洋一

(1988年12月27日受付)

I.内容要旨
モノクローナル抗体KM10は消化器癌と高率に反応し,臨床応用の可能性が示されているが,その認識する抗原の性状はまだ明らかにされていない.今回我々はKM10がCEAに特異的な抗原を認識している可能性を見出すと共に,新しく作製した抗CEAモノクローナル抗体(A10,B9,JA4,AH3)と免疫組織染色及び免疫学的反応に関する比較検討を行い,以下の結論を得た.
(1) KM10と各種抗CEA抗体はCEA固相化プレートを用いたEnzyme linked immunosorbent assay (以下ELISA法と略す)で抗体濃度依存性にCEAとの反応が確認された.
(2) KM10と各種抗CEA抗体は,胃癌・大腸癌・膵癌等と反応した.
(3) 抗CEA 抗体のうち一部は,顆粒白血球との反応(B9•JA4)及び胆管上皮との反応(JA4・AH3)を認めた. これらはCEA関連抗原との反応であると考えられた.
(4) KM10とA10は共に顆粒白血球や胆管上皮との反応を認めず,正常消化管粘膜では管腔側に弱い反応を認めるだけで, CEAに特異的な抗原を認識していると考えられた.
(5) KM10, A10と酵素処理を施したCEAとの反応では,プロナーゼ及びトリプシン処理群で抗原性が失活し,両者のエピトープには蛋白の関与が示唆された.
(6) KM10, A10とCEAの反応は互いに阻害を認めず,両者の認識するエピトープは相異なると考えられた.
(7)固相化A10, ピオチン化KM10を用いたenzyme immunoassay (以下EIAと略す)で,濃度依存性にCEAを検出できた.
以上よりモノクローナル抗体KM10とA10は共にCEA特異部分に対する抗体として診断・治療面での新たな臨床応用が可能であると考えられた.

キーワード
モノクローナル抗体 KM10, モノクローナル抗体 A10, CEA, CEA 関連抗原

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