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日外会誌. 90(10): 1758-1764, 1989


原著

制癌剤大量肝動注療法における veno-venous bypass 併用活性炭吸着回路の有用性について

神戸大学 医学部第1外科(主任:斎藤洋一教授)

具 英成 , 斉藤 正樹 , 西山 裕康 , 藤原 澄夫 , 岩崎 武 , 大柳 治正 , 斉藤 洋一

(1988年11月25日受付)

I.内容要旨
制癌剤大量肝動注療法における重篤な全身的副作用を軽減する目的でveno-venous bypassによって肝静脈系を分離し選択的に活性炭吸着する方法を考案し,その有用性について基礎的検討を行なった.
雑種犬(9.2±2.0kg)を用いDHP-1(クラレ社)による活性炭吸着の有無及び方法によりI非吸着群;肝動注のみ施行(n=3),II下大静脈血吸着群;左大腿静脈より下大静脈血を遠心ポンプで部分的に脱血し吸着後左外頚静脈にバイパスした(n=3),III肝静脈血の選択的吸着群;下大静脈を肝静脈合流部の頭側及び尾側の2ヵ所で遮断するとともに遠心ポンプによるveno-venous bypassで肝静脈還流を他の下大静脈系から分離し制癌剤を選択的に吸着した(n=5)の3群に分け比較した.各群とも胃十二指腸動脈より逆行性に挿入したカテーテルからAdriamycinを3mg/kg体重の割合で肝動脈内に1分間でone shot動注し末梢,吸着筒前及び後の3ヵ所の静脈血を経時的に採取し薬剤濃度を測定した.
1分間のone shot動注後,各群のAdriamycin最高濃度は末梢血でI群;5.61±2.42μg/ml,II群;1.17±0.31μg/ml,III群;0.42±0.17μg/mlとなりIII群の肝静脈血の選択的吸着群では著しく低値であった.また吸着筒前後の薬剤濃度と灌流量より求めた吸着効率はII群で10.9%であったのに対しIII群では27.5%と著明な改善を認めた.
以上よりveno-venous bypassを用いた肝静脈血の選択的活性炭吸着により肝動脈内に投与した大量の制癌剤を全身循環の手前で効果的に除去することが可能であった.本法は肝動注療法に併う制癌剤の全身的副作用を最小限に留め,肝癌治療に有効な大量動注を可能にしうる新しい治療法として有用と思われた.

キーワード
制癌剤肝動注療法, Veno-venous bypass, 活性炭吸着法, Adriamycin

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