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日外会誌. 90(10): 1752-1757, 1989


原著

抗原特異的免疫寛容の誘導における肝臓の役割
ードナーリンパ球術中経門脈的投与によるラット移植腎生着延長効果と免疫学的解析

京都府立医科大学 第2外科

濱島 高志 , 吉村 了勇 , 松井 英 , 李 哲柱 , 岡 隆宏

(1988年11月22日受付)

I.内容要旨
ラットの腎移植モデルを用いて,ドナーリンパ球を経門脈的に移植直後のレシピエントに投与し,移植腎の生着延長効果を検討した.近交系ラット(BN→LEW)の腎移植終了直後に,ドナー(BN)のリンパ球1×108個をレシピエント(LEW)のa)門脈内(PV群),b)末梢静脈(IV群)に投与した.PV群の生存日数は28.9±9.2日と,移植のみを行ったコントロール群(7.8±0.6日,p<0.01)あるいはIV群(10.4±3.1日,p<0.05)に比べて有意に延長した.また,third partyコントロールとしてDAラットのリンパ球を経門脈的に投与したところ,7.4±0.8日と生存日数の延長はみられなかった.移植後6日目のレシピエントの移植腎浸潤細胞および脾細胞のフェノタイプを調べると,PV群ではコントロール群よりも,キラー/サプレッサーT細胞やIa抗原陽性細胞の割合が低かった.移植腎浸潤細胞のドナーリンパ球に対する細胞障害活性は,PV群においてE/T=50にて19%と,コントロール群(51%,E/T=50)それに比べて低い値を示し,著明にキラー活性が抑制されていた.
ドナー・レシピエント間の混合リンパ球反応(MLR)に移植後10日目のPVラットの脾細胞を加えても何ら抑制を示さなかった.一方,このMLR反応系にPVラットの血清(6%)を加えると,正常ラットの血清に比べ著明な(70.6%)抑制作用を示した.また,移植腎の組織像においては,生着中のPV群のラットにおいて,血管周囲に単核球の浸潤を認めた.以上の結果より,移植直後のドナーリンパ球の経門脈的投与により,末梢静脈投与例よりも移植腎の生着延長がもたらされ,かつこの効果はドナー抗原の投与により特異的に得られるものであり,レシピエントの血清中に液性の抑制因子が存在するために生じることが示唆された.

キーワード
腎移植, ドナーリンパ球, 門脈投与

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