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日外会誌. 90(8): 1274-1277, 1989


症例報告

感染性腹部大動脈瘤の血栓性閉塞に対して緊急血行再建術を施行した一治験例

古賀病院(久留米市) 外科
*) 古賀病院(久留米市) 循環器内科
**) 佐賀医科大学 胸部外科

榎本 栄 , 堀田 圭一 , 内藤 光三 , 古賀 伸彦*) , 樗木 等**) , 伊藤 翼**)

(1988年8月16日受付)

I.内容要旨
症例は59歳の男性で発熱,全身倦怠,腰痛を訴え,腹部に拍動性腫瘤を触知した.血液培養は陰性であったが,中等度の炎症所見と画像診断上腎動脈下の嚢状大動脈瘤を呈したため感染性腹部大動脈瘤と診断された.抗生剤を投与し経過を観察したが入院後6日目に突然両下肢のしびれを訴え,両側の大腿動脈が触知不能となった.このため再度大動脈造影を施行したところ腹部大動脈の腎動脈分岐部より3cm末梢の位置での完全閉塞が認められ,緊急手術を施行した.瘤は周囲の腸管・下大静脈と強く癒着しており,内腔には多量の壁在血栓がみられた.感染性腹部大動脈瘤の血栓性閉塞と診断し瘤切除・Yグラフト置換術を施行した.瘤壁の病理所見では外膜の線維化と大食細胞,好中球,リンパ球,形質細胞の著明な浸潤がみられた.術後の経過は順調であった.突然閉塞という非常に稀な経過をたどった本症例を報告し,感染性腹部大動脈瘤の病態,治療についても考察を加えた.

キーワード
感染性腹部大動脈瘤, 血栓性閉塞, 緊急血行再建

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