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日外会誌. 90(8): 1161-1169, 1989


原著

N-エチル-N'-ニトロ-N-ニトロソグアニジンのノズル式制限投与法による選択的な犬食道癌発生

大阪大学 微生物病研究所臨床部門外科

塚原 康生 , 藤田 昌英 , 大道 道大 , 石井 泰介 , 田口 鐵男

(1988年8月16日受付)

I.内容要旨
犬の食道癌は化学発癌剤ENNG(N-Ethy1-N’-Nitro-N-Nitrosoguanidine)の経口投与により発生をみるが,これはむしろ胃癌発生に随伴するものであった.今回われわれは,より効率的,より選択的に食道癌を発生させる方法を確立するため,ENNG投与をノズルによる制限投与法とし,従来の自由投与法における発癌状況と比較した.
ノズルによる制限投与法は,5頭の犬に50mg/l ENNG水溶液を投与したが,その投与総量は平均8.4gであった.投与開始後比較的早期から食道に病変が出現し,剖検により全例に多発性の食道癌発生をみ,うち2頭には進行癌がみられた.2頭にリンパ節転移を認め,1頭には肺転移も認められた.食道病変は隆起型病変が多く,病理組織学的には,扁平上皮癌のほか軽度の異型巣までの種々の異型度の病変が存在した.胃癌は4頭にみられた.
従来の自由投与法では,5頭中4頭に胃癌の発生をみたが,食道に扁平上皮癌を認めたのは2頭のみで,いずれも小病変であった.
ノズル式制限投与による実験的犬食道癌作成法は,比較的短時間に,食道病変の選択的発生がえられ,きわめて有用であると考えられた.

キーワード
ノズル式発癌剤経口投与法, 実験犬食道癌, 実験犬胃癌, N-エチル-N’-ニトロ-N-ニトロソグアニジン (ENNG), 扁平上皮癌リンパ節・肺転移

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