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日外会誌. 90(7): 1065-1071, 1989


原著

骨格筋ポンプによる右心バイパスの基礎的研究

金沢大学 医学部第1外科

渡邊 剛 , 岩 喬 , 三崎 拓郎 , 向 歩 , 坪田 誠 , 大竹 裕志

(1988年9月5日受付)

I.内容要旨
重症心不全など従来外科手術適応外とされてきた疾患に対して,骨格筋を用いての循環補助の可能性を検討する目的に基礎的実験をおこなった.方法は雑種成犬14頭を用い,準備手術として右広背筋に心室デマンド型ペースメーカーを移植し6~12ヵ月の慢性電気刺激を行った.二期手術として,同筋にてロールを作成し,その内腔に弁付き流入流出路をもつバルーンを挿入し骨格筋ポンプを作成した.流入路は人工血管を右心房に,流出路は肺動脈主幹部に接続した.骨格筋の電気刺激は4連発のテタヌス刺激とした.骨格筋ポンプによる右心バイパス機能を条件1:対照,条件II:完全右心バイパスの各条件下で検討した.大動脈圧(AoP),大動脈血流量(AoF),左房圧(LAP),肺動脈圧(PAP)は条件IIにて有意に(p<0.01)低下し中心静脈圧(CVP)は同様に有意に(p<0.01)上昇したが,骨格筋ポンプ駆動にてApP,AoF,LAP,PAPの有意な上昇とCVPの有意な低下を認め骨格筋ポンプの循環補助効果が認められ,また完全右心バイパス時においても循環維持が十分可能であった.ポンプ駆動時の補助流量と中心静脈圧との関係をみると,r=0.753にて有意な相関が認められ,骨格筋ポンプの流入圧に比例し拍出量が増加することが示された.長期の電気刺激を行った右広背筋は,刺激を行っていない対側筋に比べ組織学的検討では,ATPase染色にて1型筋線維の著明な増加が認められ,fast-twitch muscleから疲労抵抗性のslow-twitch muscleへの転換が証明された.長期の電気刺激を行った骨格筋による右心系の循環補助は可能であり,ポンプおよびペースメーカーの改良により臨床応用も可能になると思われる.

キーワード
骨格筋ポンプ, 長期電気刺激, 循環補助, 右心バイパス, テタヌス刺激


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