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日外会誌. 90(7): 1009-1018, 1989


原著

胃癌所属リンパ節内の T 細胞各種亜群の構成比率の変化

横浜市立大学 医学部第2外科

渡会 伸治

(1988年8月25日受付)

I.内容要旨
胃癌に対する免疫防御機構の一部を解明する目的で,胃癌患者所属リンパ節におけるT細胞各種亜群の構成比率を算定し検討した.36例の胃癌患者より,73個の所属リンパ節を採取し,リンパ球を分離し,singleおよびtwo color fiow-cytometryを用いてT細胞各種亜群の比率を算定した.この際,抗体としてCD3,CD4,CD8を用いたほか,二重染色法ではCD4×Leu8,CD4×4B4,CD8×CD11も用いた.
1)転移陽性リンパ節では転移陰性リンパ節と比べ,CD3,CD4陽性細胞の比率が低値を示しCD4/CD8比も低下していた.また,CD4Leu8細胞(helper T-cell),CD44B4細胞の比率が低下し,CD8CD11細胞(suppressor T-cell)の比率が増加していた.
2)リンパ節転移陰性例(以下n(-)症例)の転移陰性リンパ節のT細胞各種亜群の構成比率は,近位リンパ節と遠位リンパ節の間に差はみられず,対照のリンパ節とも差はみられなかった.
3)リンパ節転移陽性例(以下n(+)症例)の転移陰性リンパ節のT細胞各種亜群の構成比率は,リンパ節転移度の高いものでは低いものと比べCD8+CD11細胞の比率が増加していた.また,近位リンパ節は遠位リンパ節と比べCD3,CD4陽性細胞,CD4+4B4細胞の比率が低下していた.
4)転移陽性リンパ節内のT細胞各種亜群の構成比率は,転移癌細胞の多寡により差はみられなかった.
以上から,胃癌患者のリンパ節転移陰性例では所属リンパ節内のT細胞各種亜群の構成比率は対照例のリンパ節と変わりなかった.しかし,癌のリンパ節転移の進行にともない転移陰性リンパ節でもT細胞各種亜群の構成比率は変化し,転移が成立すると,helper T-cellの減少,suppressor T-cellの増加がみられ,所属リンパ節の免疫防御能の低下を思わせた.

キーワード
胃癌, 胃癌所属リンパ節, monoclonal 抗体, two color flow-cytometry, T 細胞亜群

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