[書誌情報] [全文PDF] (390KB) [会員限定・要二段階認証][検索結果へ戻る]

日外会誌. 90(6): 949-952, 1989


症例報告

胃全摘出後のインスリン併用高カロリー輸液中に発生した抗インスリン抗体と低血糖発作の検討

大阪府立成人病センター 外科
*) 大阪府立成人病センター 臨床検査科

安田 直史 , 石川 治 , 大東 弘明 , 古河 洋 , 今岡 真義 , 岩永 剛 , 笹隅 富治子*)

(1988年6月23日受付)

I.内容要旨
42歳,男性.胃全摘出術後の栄養管理として,ウシインスリンを併用した高カロリー輸液(IVH)を施行したところ,術後25日目頃より低血糖発作を頻発するようになった.そこでインスリン投与を中止したが低血糖発作は持続した.総immunoreactive insulin(IRI)は1,170μU/mlと著明に増加しており,うち1,120μU/ml(96%)はγグロブリンと結合していた.c-peptideも11.4ng/mlの高値を示しており,糖質投与量を減少することによって総IRI,結合IRI,c-peptideは漸減し,低血糖発作は消失した.本症例では,ウシインスリン投与によって抗インスリン抗体が発生し,ウシインスリン投与中止後も自己インスリンがこの抗体と結合し,この結合インスリンから大量のインスリンが遊離して低血糖発作を惹起したものと考えられた.糖質投与量を減少させて,抗体と結合するインスリンの過剰産生を抑制することが本症例の低血糖には有効であったと考えられた.

キーワード
抗インスリン抗体, 低血糖発作, 高カロリー輸液

このページのトップへ戻る


PDFを閲覧するためには Adobe Reader が必要です。